2013年9月9日月曜日

ディオバンを服用した日々

  今年の2月頃、京都府立医大の教授が高血圧治療薬ディオバンのデータを改竄していたというニュースが新聞に掲載されていて驚いた。その薬は私が毎日服用している薬だった。
 次の通院日に主治医に「信用ならん薬は替えて欲しい。」と言ったが、医師は「教授が怪しからんだけで薬の効能は間違いないんだ。」と答えるので、その日はそれで終わった。
 その後も、通院ごとに「ディオバンは信用できるのか。」と尋ねたが、「日本で一番使われている高血圧治療薬で効能は間違いない。」というので続けてきた。
 5月からは、「そんなに嫌なら替えてもいいよ。」と主治医が言ったが、「好き嫌いでなく客観的な評価を主治医としてどう思うのか。」と聞き直しながら続け、結局、8月初めに「やっぱり替えてくれ。」と言って替えてもらった。
 薬を替えたのが真夏であったり、いろんな誤差があるので一概には言えないが、私の場合は薬を替えた後の方がコントロールができている。前回の診察日は主治医が私の毎日のデータ・グラフを見て、「替えた薬の方がよく効いているなあ。」と感心した。ということは・・・・・・

 さて、高血圧治療薬データねつ造事件の根はほんとうは深いと思う。
 その一側面を言えば、国が「小さな政府」「行政改革」の名の下に大学教育の予算や各種研究費用の予算を全く削り倒し、産学連携という大義名分?で、研究費用は企業頼みということを大前提にしている癒着構造を作っていることである。かの原子力村もそのとおり。

魯迅
  話は飛ぶが、中国では秦の滅亡(前207)の後は少なくとも清の時代まで、基本的には小さな政府の国だった。
 3年に1回の科挙で広い意味の進士でさえ300名弱であったから、実際の行政は科挙及第のエリート官僚が私的に雇用する胥吏(しょり)や幕客に任されていた。つまり、行政を彼らに外注、下請けに丸投げしていたので、胥吏、・幕客の収入の大半は税などとは別口で人民から巻き上げたものであった。・・・・ということを関西外大山口久和先生の講義で聞いた。
 先生は、「魯迅は、科挙は中国民族の健康な精神の発達を損なった元凶であると批判している。」と引いて、そういうシステムが中国近代化阻害の一要因だとも言われている。
 私は単純に大きな政府を叫ぶものではないが、「小さな政府」は福祉を家族責任(歴史的中国では宗族)に捨て去り、安全すらも企業まかせにする道ではないかと・・・・ディオバンを服用続けた日々を振り返りながら再認識するのだった。

4 件のコメント:

  1. 長谷やん
     記事と関係のないコメントで恐縮ですが、いま日本中が湧きかえっている東京五輪開催どう思います。
     この時期に批判的意見を発信するのがはばかられるようなこの日本の雰囲気も問題ですが、私は最後のプレゼンでの安倍首相の発言に驚き、怒りすら感じました。「汚染水は完全にブロックされている。健康問題は今までも現在も将来も全く問題ない」とはよくも言ったりです。日本人の誰もが嘘だと感じるような、こんな発言で世界中を騙してまで五輪を招致する必要があるのでしょうか。今も避難生活を続ける15万人の人たちはどう思うでしょうか。テレビで感想を聞かれた避難者が、「あれは私たちとは別の日本のことだと思う」と答えていたのが印象的でした。
     つまるところ、安倍首相には被災者の暮らしを何とかしようという視線はまったくないのだとしか思えません。
     五輪招致をめぐる良識をうしなったような、あまりにも腹立たしい状況が日本を覆っていることにある種の危惧を覚え、思わずコメントしました。

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  2.  和道おっさんの感想や意見に全く同感です。ので、話は繰り返しません。
     そして私は、安倍首相の大嘘は遠からず世界中に明らかになると思うのですが、そのとき世界の世論が「やっぱりエコノミックアニマルの日本人は信用ならぬ」と“日本人全体”の品格が疑われはしないだろうかと悲しくなります。
     もう一つ、テレビを見たほとんどの日本人は「あそこまでよう言うわ」と思いながら、オリンピックのために許容する傾向も少なくないように思います。そこに漂う「冷笑主義」というのもこの国の理性をひどく蝕んでいるように思います。「冷笑に裏打ちされた熱狂」は大袈裟に言えばファシズムの土壌だと思います。
     特にテレビはオリンピック利権の「利害関係者」そのものですから、今後強烈に強化されてくるであろう、オリンピック関連の強引な事業等に対する正当な批判を“非国民”扱いする同調圧力を批判していくことの大切さを思っています。
     話は跳んで「あまちゃん」ですが、コミックドラマに政治解説を求めるような野暮なことは申しませんが、あそこでは袖ヶ浜以外の惨状、特にフクシマを心配する声が『意図的に』回避されたと、・・私は「NHKだなあ」と思います。この国のマスコミは重症です。

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  3. 「話は飛ぶが」という前置きがありますが、ほんとうに見事に話が飛びましたね!ディオバンから科挙とは…

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  4.  mykazekさん、民主党政権のときは「身を削る」という言葉がもてはやされました。そして、今もそれは引き継がれ、「官から民へ」「小さな政府」という言葉は、全く理性的な検討抜きで、「前向きのポーズ」、民主主義国家の当然の前提のように言葉が独り歩きしています。
     ほんとうにそうだろうか、そんなことを言っていたら大変なことになりはしないか……そんな気持ちに乗って話は自然に飛んで行ったのです。

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