2013年6月1日土曜日

鯛の鯛

  桜の花が散ったころ、お江戸では初ガツオだが関西では桜鯛が旬である。
  江戸っ子・其角は、津の国のナニ五両せん桜鯛 と詠んでいる。
  江戸っ子というのは、あはは である。(今も昔も江戸のお方は高く買ったことを喜ぶのだ)
  其角は力を入れて自慢しているが、摂津の住人でこの句に怒る人はいないだろう。

鯛の鯛
  桜鯛という名は、桜の開花時期の鯛という意ではなく、鯛の婚姻色によるとも言われている。
  そのころ、瀬戸内の浅瀬には鯛の魚島ができるそうだが、釣り人なら実見しているかも知れないが、私は文字の世界でしか知らない。
  この時期になると、上本町一丁目の割烹には「大坂に魚島の鯛あつまれり」だったか、そのような句が掲げられる。(正確には友人が詳しいだろう。)

  先日、桜鯛の兜と切り身を併せて塩焼きにした。
  兜は兜煮もすまし汁も美味しいが塩焼きも美味しい。当たり前である。
  2歳の孫娘は父親に教わって既に味を知っているらしく、美味しそうに鯛の目玉を食べて上手に白い玉だけを口から出した。(なお、白い玉も食べるという人もいるが私は食べない。白い玉は私は美味しいとは思わない。)
  白い玉の周りの目玉全体はコラーゲンの塊だから孫はお肌美人になるに違いない。
  美味しい上に栄養満点なのだから申し分がないのだが、この目玉、世間では不当に「親父の食べ物」扱いされ蔑まれている。
  娘が女友達や会社の女性などと食事に行ったとき、鯛の目玉を食べて皆に「ひかれた」と言っていた。もちろん娘は、こんなおいしいものを食べない人がいるなんてことを想像すらせず育っている。

  鯛の兜を食べるとき、これはどこの家庭でも同じだろうが、カマの部分の「鯛の鯛」を綺麗に出して見せ合うのが我が家でも暗黙のルールである。
  孫娘も知っているらしく、お父さんやお爺ちゃんの「鯛の鯛」を手に取って喜んだ。
  やはり、鯛の兜があると、何となく食卓がめでたくなる。
 こういうつまらぬ話も味付けのひとつだろう。

  PS  街で旧い友人と会った。「ブログを読んだで。御馳走を食べてるねんな。」との誤解・・・。
 あの『玉子丼』。280円程のチヌの卵で夫婦が夕食をとったという話なのに・・・。
 そして、今日の話もそれとほとんど変わらない。
 そういう誤解を与えたなら、書き手としては、うふふふふふ

6 件のコメント:

  1.  小さい頃は、鯛の鯛を上手く出すのは紙芝居の型抜き菓子のように難しかった。つまり鯛の鯛は、箸使いが不器用な時期を卒業して一人前の大人になった証でもあった。
     だからその他の骨とは少し離して、お皿の端に綺麗に出すのが我が家のテーブルマナーです。何か???

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  2.  真鯛は魚の王様と言われ、中でも明石鯛はブランド品であるが「明石鯛はなぜ美味しいかというと、もう一つ美味しいので有名な明石蛸を食べているから」と、明石・林崎漁協の鷲尾氏の本にある。なるほど。
     ところで我が家の兜は形こそ大きいが、正真正銘の養殖ものである。ああ。
     それでもこれほど家族そろって楽しんでいるから、まっいいか。

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  3. 今は廃刊となった「週刊釣りサンデー」だったか、釣り関係の古書だったかに「観音参りの鯛」というものがあるという記事を読んだように思います。いわゆる「鳴門鯛」の中には骨にコブがある鯛がおり、この鯛は鳴門の大渦を泳ぎきり、観音霊場にお参りした鯛、身の締まった鯛、ということで重用したという話です。実際、鳴門のきつい水流に揉まれるうち骨が折れ仮骨が形成されることがあるそうで観音参りをしたかどうかは別にして「鳴門の鯛」のおいしさを現わす例えになっているそうです。昔、宮崎でご馳走になった「昆布締めの鯛」の刺身の美味しさが忘れられません。

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  4.  鳴門や明石の激しい潮流を潜ってきた鯛は「身が引き締まっている」と言うのですね。
     「観音参り」ですか。「紀三井寺に参ってきた」と言うことでしょうか?
     そして、「昆布締めの刺身」ではありませんが、「冷めた鯛は昆布の上に乗せて酒蒸しにせい」と言いますね。
     そうそう、「松かさ」と言うのですか、私は皮をはがさず、皮の上に熱湯をかけてから氷で冷やして食べる刺身が大好きです。ズバリ皮の裏の脂です。
     鯛の話、目玉の話、ひげ親父さん、茅渟の海さんからもいっぱい聞きたいところです。

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  5. 酒飲みの話では天下一品の六代目松鶴師匠の噺で、下戸の男が酒粕でいい機嫌になり、俺も飲めるんや~と自慢をしに行ったのはよいが、何ぼ飲んだ、と聞かれ「2枚や」肴は何や?で、「黒砂糖」と答えバレルという噺、その時、「酒飲みやな~と思ってほしかったらこれぐらい言わんかい、」と教えてもらった酒の肴が「鯛のぶつ切り、ワサビのぼっかけ」というのがあり、家で真似して飲みました。でも、鯛の刺身は程よい厚さ(これは難しいですよ)でないと美味しくありません。

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  6.  そうそう刺身には程よい厚さがありますね。
     「ぶつ切り山葵のぼっかけ」というのは知りません。
     私は、鯛や鮃を少し薄く切って七味ポン酢も好きです。

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