2013年6月18日火曜日

証拠隠滅

  2013年6月17日付朝日新聞大阪本社版「声」欄に「今も忘れぬ証拠隠滅の光景」と題する四日市市の品川氏81歳の投稿があった。
 氏は、橋下市長の慰安婦問題の発言を引いて、戦時中の事柄に対し「証拠がない」という言葉をよく聞くと述べ、「そのたびに、敗戦直後の校庭で、教師が書類や木製の模擬銃などを焼却していた光景を思い出す。」「姉が勤めていた陸軍関連の出先事務所でも書類を焼却したと聞かされた。」「証拠隠滅は、全国の官民のあらゆる所で組織的に実施されたのだろうと思う。ただ、こうした記憶や証言も、「証拠がない」と片付けられてしまうのか。」と結んでいた。
 
 私の父は終戦時、松下飛行機㈱の管理職だった。
 木製ではあるがれっきとした爆撃機「明星」を製造していた工場で、軍(海軍?)が直接指図していたらしい。当然だろう。
 その父が晩年、終戦時にはありとあらゆる書類、ちょっとでも軍との関係のありそうなゴム印等々までも、何日も何日もかけて全て焼却したと語っていた。

 テレビドラマの松下幸之助伝のようなものでは、軍に無理やり頼まれて松下飛行機㈱を作ったおかげで、とんだとばっちりで公職追放?を受けたとか、社員が嘆願書を作ったと言う美談が喧伝されているが、それもこれも名もない人々の証拠隠滅のおかげの話だと松下政経塾出身のお偉方には思ってほしい。
 だが、「証拠隠滅の証拠がない」と彼らなら言いかねない。
 
 だから、品川氏の投稿は全く的を射たものだと私は思う。
 
 なお、慰安婦問題では思うことが2点ある。
 第1は、橋下市長に対して提訴も辞さないと述べている中央大学吉見教授の公開質問状のとおり、数々の証拠があるにもかかわらず、橋下氏がいろんな言葉の修飾を重ねて「証拠がないんだ」と思わせていることが問題だろう。証拠はある。
 第2は、この問題では安倍首相が先行して同趣旨の発言を繰り返しており、現在は米国の予想外の反発を受けて猫を被っているが、その点では、維新も自民も変わりがないことに注意が必要だろう。

 戦時体制の反省をすると「それは自虐史観だ。」と言うような声があるが、私は当時の指導者だけを非難してよしとしたり、多くの先輩たちの人生をけなすことではないと思う。
 澄んだ眼で歴史を見、記録の紙背を想像することが「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」(憲法前文)することだと思う。
 
 自民も維新も、その憲法を変えようと本気で言っている。
 「発議要件だけだ。」との言い方も胡散臭い。

9 件のコメント:

  1. 戦時、終戦当時の事を語れる体験者が少なくなっていく中、彼等を両親に持つ我々世代が微かな記憶を呼び起こし次世代に伝えていく事も重要ですね。

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  2.  近頃、割合つまらないことがらでも語り伝えることが大切かなと思い始めています。
     例えば、私たちの子供の頃のお祭りや夜店の周囲には必ず傷痍軍人がいましたね。ニセ傷痍軍人もいたという話もありますが、それは別にして・・・そういう傷痍軍人のことも、闇の中に葬り去られやすい史実のひとつでしょう。
     悪意がなくても、自慢話に比べて恥ずかしい思い出は誰も語りたくないものです。そして、その上に組織的な証拠隠滅があったのです。
     慰安婦問題でも、私は、異常に証拠が少ないと言うことが国や軍が積極的に関与して強制した証だと考えるのです。そのように考えるべきが理性であり知性だと思います。

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  3. 長谷やん
     80歳の品川さんの投稿は私も読みました。実際に証拠隠滅に携わった人の言葉がもつ重みとともに、「もう黙ってはおられない」と気力を振り絞って書かれたであろう文章に打たれました。
     当時ならだれもが知っていたであろう常識のような証拠隠しで、証明できる事実が失われてしまったことをいいことに、「証明できる証拠はない」と言い切る橋下氏の政治家としての資質と、人間としての人格に唖然としています。

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  4.  和道おっさん、コメントありがとうございます。
     強制連行は女性だけに限りません。昭和17年に東条内閣は「華人労務者内地移入ニ関スル件」を閣議決定し、18年に山東半島で行われた軍の「人間狩り」の命令書には「①17~45歳の男子は全て逮捕すべし、②断髪の女性は逮捕すべし、③逃げる者反抗するものは射殺すべし」とあります。
     少し真面目に本を読めばこれらの事実はいくらでも確認できます。
     おっさんのおっしゃるとおり、それに目をつぶる橋下氏や安倍氏の人格を疑うには根拠があります。口先だけの言い訳で許してはならないと思います。この話は過去の「評価」でなく(そうでもありますが)現代の人権や民主主義の問題です。

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  5. ジャカランダの花 見てきました 一心寺のお参りの後高木なので首を曲げて
    見上げていると 人が寄ってきて わーきれい! 口々に名前も咲いている事も
    知らなかったと・・・
    八幡屋公園は まだ若木で低木なので近くで花を見る事が出来ました
    今日は 一雨来る前で良い日でした
    ありがとうございました 気になっていたジャカランダ ひとつ解決しました
    見頃はいつですか? 今でしょう{笑}

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  6.  わこたん、レポートありがとうございます。ジャカランダの情報、お役に立てたようで何よりです。寄ってこられた方々が口々に名前も咲いていることも知らなかったと・・・現代人ってそういうものですね。
     私の街では、ねむの木が咲き始めました。これもきれいな花です。そして、ヤマモモがあちこちで大きくなってきました。楽しみです。暑い、暑いとばかり言ってられませんね。

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  7. 前回、私のブログへの長谷やんのコメントの通り、松井知事は、八尾市長に「検討すらしないのは視野が狭いし、利己的だ」と批判しました。その松井知事を石原共同代表は、「行政を知らないから、ああいうとんちんかんなことになる。大阪(の維新幹部)は国政に未経験、」と批判、いよいよ、内部分裂が起きそうです。

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  8.  橋下維新は失速するでしょう。しかし、あえて言えば、維新をブームにした風も失速させる風もマスコミの影響の大きいもので、不健全な面をもっていると思います。
     大切なことは、多様な意見が尊重される社会、落ち着いた議論ができる社会です。
     そのためには、維新を批判する人々も、自分の考えを自分の言葉でもっともっと発言すべきです。
     結局マスコミ頼みの内弁慶であってはいけません。

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  9.  タテマエは嘘っぽくホンネこそが真実。正規労働者、年金受給者、農家、公務員等々を既得権益として庶民同士で罵り合い足の引っ張り合いをすることが現実的でホンネの政治。拡大し固定化した格差社会を打ち破るためなら行政も教育も一回破壊されたり戦争さえ悪くはない。
     橋下維新がまき散らし、橋下維新を支えた社会的意識は克服されていないと思います。
     だから、失速も不健全と思います。マスコミ論調で喜んでいてはならないと思います。
     大阪の批判する人々が、文化を語り、未来を語り、人生を語ることがなく、金太郎飴のような批判で良しとしていたのではならないように思います。

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