2013年6月16日日曜日

夏は来ぬ

  2年前に孫の夏ちゃんが誕生した。
ネットから
  当時特養に入所していた私の実母(だから曾祖母・ひいばあちゃんにあたる)に報告をしたら、この曾孫の名前に連想して「夏は来ぬ」を口ずさんだ。驚いた。
 これが、私が母と母の周囲の方々といっしょに無手勝流の「音楽療法?」を始めたきっかけだった。
 母のテーブルの3人から5人程度に歌詞を渡して、適当にそれぞれが歌うというものだったが、明らかにそれまでよりも顔の表情が豊かになり、帰りには予想外だったが「ありがとう」とお礼を言われた。
 ということを実母の卒業まで続けることができた。

 この歌は、明治29年、佐佐木信綱作詞の歌で、時代を感じさせる美文だと思うが、全体に季節の風景を美しく描きながら、3番に「おこたり諌いさむる 夏は来ぬ」とちょっと道徳的な歌詞がある。
 で、教養のない私が「何を諌めるんでしょうね。」と呟いたところ、テーブルのお婆さんが小さな声で「蛍雪の功ではありませんか。」と教えてくれた。なるほど。
 体力の低下で見た目は子供に帰ってしまったように見える老人を、心して見直した一瞬でもあった。

 さて、ちょうど蛍の季節である。しかし、夜に出かけるのが億劫になり、ビールでも飲んで休みたいと思うようになっている。情けないことだとは判っているのだが・・・・。

 先日、義母に蛍の思い出を聞いてみた。
 「菜種の殻で捕りまんねん。」「ナンボでもいたから、家にも持って帰らなんだ。」と小さい頃の思い出を語ってくれたのだが、あまりに普通の風景だったらしく、現代の感覚で私が話の呼び水を注してみても、「草で編んだ籠に入れた。」とか「ホタルブクロに入れた。」とか「蚊帳の中に飛ばした。」というような話は一切なく、ただただ普通に「いっぱい飛んでました。」と語るだけだった。
 そして、 〽蛍の宿は川端柳~ と振ってみると、 〽こっちの水は甘いぞ~ と帰ってきた。

     夏は来ぬ

1 卯の花の 匂う垣根に           2 さみだれの そそぐ山田に
  時鳥 早も来鳴きて               早乙女が 裳裾ぬらして
  忍音もらす 夏は来ぬ             玉苗植うる 夏は来ぬ

3 橘の かおる軒端の            4 楝ちる 川辺の宿の
  窓近く 蛍とびかい               門遠く 水鶏声して
  おこたり諌むる 夏は来ぬ           夕月すずしき 夏は来ぬ

5 五月闇 蛍とびかい
  水鶏なき 卯の花さきて
  早苗植えわたす 夏は来ぬ

5 件のコメント:

  1.  20年程以前には、高知の私の家の周りにも蛍がいっぱいいました。家の中にも蛍が迷い込んできて、電気を消して、嫁さん子供父母皆で蛍の光を楽しんだことを覚えています。
     しかし、どういうことか最近は蛍を見ることがほとんどなくなるました。蛍は環境に敏感であるといいますので。
     ところがどっこい、私の家の傍を流れている、虎杖(イタドリ)のたくさん採れる桜川には、昔はあまり見掛けなかった鯉(誰かが放流したと思いますが)野鳥(アヒル、サギ、シギ、ゴイ、カワセミ、ウ等・・・)たくさんの動物を見ることが出来ます。
     私も孫が2人いて小2と年長の男の子ですが、神戸から時々遊びに来ます。鯉や野鳥を見て「いっぱいおるねー。もっと大きいのいいへん?」と言われて「クジラ見せたる」と大みえ切ってなけなしの小遣い25000円を叩いて、ホウェールウォッチングに行きました。マッコウクジラの親子に会うことが出来て、息子夫婦はビデオ撮影に必死でした。後で孫に「クジラ大きかったやろー」と聞いたところ「カモメさんがたくさんいておもろかった。」ハチャー・・・

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  2.  ホウェールウォチングでお孫さんがカモメに感動した話は、その話自体が感動的です。遠くの鯨の影よりも、船の上を舞い、きっと餌などを目前でキャッチするカモメの動作の方が新鮮だったのでしょう。そうです、けがれた大人はつい「値段」と「値打ち」を勘違いするのです。私たちも澄んだ眼で世間を見なければ・・・・ですね。
     またコメント上で楽しいお便りをお願いします。

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  3. もう少し、大きくなったら「じいちゃんの海ではクジラが泳ぎよった」と自慢してくれますよ、それにしても、昔、青年部の運動会であんたの姿が見えなくなったら「おとーさん、どこ行った」と泣いていたあの息子さんが、二人の子供の親になられたのですね、此れもまた感動です。

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  4.  〽言うたらいかんちゃ おらんくの池にゃ
     潮吹く魚が泳ぎよる
     ・・・特養無手勝流音楽療法ではこの歌は大人気でした。
     そして、入所者と私が楽しく歌っている横でスタッフが「へえ~そんな歌知らんなあ」と言うのです。
     そうです。年寄りが「こんなことはみんな知ってるはずや」と思い込んでいることも若い方々は知らないことが多いのです。故に、年寄りは遠慮をせずに経験したことを語り継ぐべきなのでしょう。

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  5.  4番の歌詞に『楝』があるが、私は30代後半にこの歌詞を見たとき、この漢字の読み方ももちろん意味も解らなかった。
     その後、頭の中では解かっていたが、それが今年・・・・・、5月の末ごろ、道路が真っ白に雪が降ったようになった日があった。「楝ちる!」だった。どうして今までこの光景に出くわさなかったのか、あるいは見てても見えていなかったのか・・・・・、なるほど、歌詞に歌われるだけの光景であると納得した。
     楝の散る様はまるで雪景色であったが、2日もすると汚くなるので、365日の内で1~2日だけに出くわした人だけが目にできるご褒美だった。

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