香り袋、匂い袋のことをサシェともいうらしいが私にはあまり縁のないものだった。
多くの草花の本にはあまり書かれていないが、柳宗民著「日本の花」(ちくま新書)の「ふじばかま」の章によると、「この花は中国原産のものだが、奈良時代あるいはそれ以前に『香りの草』としてもたらされた」とある。つまり、匂い袋用にもたらされたのだという。
だから、「源氏三十帖藤袴」にあるように、元々は蘭というのはフジバカマのことだったが、後にもっと香りの強い(現代の)蘭にその名を盗られたようだ。
しかしこれまで、我が家のフジバカマの葉をとって揉んでみてもさほどよい香りがせず、一時は偽フジバカマではないかと疑っていたが、昨年からアサギマダラの訪問が顕著になり、フジバカマには疑ったことをごめんなさいと謝っている。
さて、気温の低下とともにアサギマダラの訪問もなくなり、花も萎れてきたので、先日、妻が葉っぱを少し乾燥させて匂い袋を制作した。
が、やっぱりそれほど匂いは感じられず、「昔の人はいくつかの香草をブレンドしたのかなあ」と語りあい、結局、捨てるのももったいないからとトイレにぶら提げておいたのだが、その後トイレに入ってその素晴らしい香りに仰天した。
そう、仰々しい香水などは一瞬にしてそれと判る代わりに後は嫌味になる。それに比べて、この控え目ながら確実な香りはどうだ。柳宗民氏の記述に相違はなかった。
それにしてもトイレの芳香剤には似合わない。もったいない。申し訳ない。
で、その香りはというと、和菓子の中で私が一番好きなもの、・・桜餅の香り、あの塩漬けされた桜の葉の香りである。
これまでは、我が家のフジバカマはそれほど気にいっていなかったから、一体いつ植えたのかも記憶にないが、少なくとも10年以上この香りを知らずに剪定し、毎年ゴミ袋に詰めて廃棄していたことになる。
無知というのはこういうものである。
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