2014年5月21日水曜日

WOOD JOB

  三浦しをん著「神去なあなあ日常」は、書評でも楽しそうだったから、文庫本発売即購入した。(その後、本屋大賞4位になったらしい)  
 ジャンルは青春小説?らしいが帯には「お仕事小説・自然編」とあった。三浦しをんらしく土台となる取材が行き届いていて大人も楽しめる読み応えのある小説だった。(いや大人の小説だろう)
 視力も悪くて「重い小説はしんどい」という妻にも「楽しかった」と好評だった。
 そういうことだったので、それを映画化したWOOD JOBを妻が「観に行こうか」というので気楽についていった。(何につけ「わしも連れてって」という「わしも族」みたいである。)
 私は相当な「活字派」で普通は小説の映画化されたものは好きではないが、これは、結構笑ったし、なんとなくホロリともした。
 青春コミック映画なのかもしれないが、原作が良くて、実力派俳優をそろえて、矢口史靖監督が撮るとこういう良質の娯楽映画になるということだろう。
 何よりも自然の風景がいい。チェーンソーの唸り声と伐採のダイナミズムがいい。
 大声で環境保護を訴えてはいないが、毎日の仕事(枝打ち等)の結果が100年後の曾孫ぐらいの時代に(先祖の枝打ちや間伐が丁寧だったと)評価されるという仕事を営々とこなしているのがいい。
 主人公がヤマヒルにやられた場面では、自分の大杉谷での経験がよみがえってきて同情した。(三浦しをんさんが取材したと思われる尾鷲の森林は大台ケ原・大杉谷の西側にあたる)

  さて、大都市に遠くないニュータウンなどに住みながらこんな感想を語るのはおこがましいが、舞台は限界集落と定義されているような村である。
 先日(5月8日?)発表された統計では2040年にはこの国で「消滅自治体」が続出するという。
 村には若者がいない。街の若者は非正規不安定雇用で希望が閉ざされている、常用雇用者は長時間過密労働でメンタルヘルスに陥り過労死予備軍となっている。この国の産業政策・労働政策・子育て政策・林業政策は根本のところが正常ではない。映画の明るさとは反対に現実は暗い。
 都会に出て、学歴を積んで、大きな企業に就職したら幸せになれるという幻想を親たちが吹っ切れていないことが問題ではないかと思ってはみても、自分の子供が携帯の繋がらない村のWOOD JOBに向かうと言ったら何と答えてしまうだろう。
 「少年よ大木を抱け」は良いキャッチコピーだと思うが答えは簡単ではない。

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