実母は入れ歯が合わなくなっているのでミキサー食である。
専門家である施設のスタッフに入れ歯の相談をするのだが、「直ぐに合わなくなって無駄ですよ。」と流石に専門家はクールである。
食事の困難は体力低下と直結するが、そこを静かに見守るのがターミナルケアなのだろうか。「ターミナルケアって何ですか。」と聞いたとき、「ターミナルは終着駅です。」との回答は名答だった。(まあ、この辺は深刻に読まないでください。)
そんな状況なので、栄養補助のためにほぼ毎日スープを持参しているのだが、これはこれで直ぐに咽(むせ)てしまう嚥下(えんげ)障害に困っていた。
そこで、飲み口の狭いマグカップではどうしても上向き加減になり咽やすそうなので、口の広い文字どおりカップ型のマグカップを買ってきた。
買ってから知ったのだがこれがアートマグというもので、カップの周囲に好きなアートを挟み込めるものだった。
そこで、本人が嫌がるかなあ?と、少し逡巡したが、夏祭りの時の本人の写真を挟み込んで持参したところ、本人も周囲も大笑いで、「この写真を麒麟ビールに買ってもらおう。」というジョークまで飛交った。
ターミナルケアの施設で笑いをとるのは至難であるが、これだけの笑いをとったのだからこのアートマグ988円は安かった。
調子に乗って義母のところにも「義母がピンクレディーのUFOを踊っているときの写真」を付けて持っていったら大いに喜んでくれた。よかった。
老朗介護に一番よく利く薬は“歌と笑い”だと・・・今頃になって気がついた己が鈍感さの方に笑ってしまっている。
ホスピスには宗教的な意味合いがあるようですが「ターミナルケア」とは直線的な表現のようにも思いますが、乗り換え駅という意味もあるようです。スピルバーグ監督の「ターミナル」では帰るべき母国をなくし、空港ターミナルに閉じ込められた男と空港従業員達とのハートウォームな物語が展開します。お母上が入所されている施設にも、そんな雰囲気が感じられて楽しく読んでいます。
返信削除夏祭りの日、開会の17時段階では「しんどいから部屋で寝とくわ」と言っていたのが、賑やかな音楽に起きだし、カップの写真のように「元気」になったのも可笑しい。
返信削除カップでは判りにくいが、左手には焼き鳥を掲げている。
ビールのポスターになりそうな「笑える」写真です。