2023年9月2日土曜日

関東大震災 虐殺 100年

   9月1日、関東大震災100年にあたるため、「関東大震災100年ー奈良県理事官が見た帝都ー」という展示を見に、奈良県立図書情報館へ行ってきた。奈良県立図書情報館はいわば奈良県中央図書館だが、他府県に勝るとも劣らない立派な図書館である。館長は著名な歴史学者千田稔先生である。

 遡る8月30日、私はテレビのニュースで松野官房長官が関東大震災時の朝鮮人虐殺について、「政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」とスピーチしているのを見て、三国志的に言うと「極まれり!」(ここまで来たか!)と心で叫んだ。

 従来から自民党内には右翼的な主張があったが、「日本列島をアメリカ合衆国の不沈空母にする」と公言した中曽根康弘にしても、それは『論争の対象たる論のひとつ』であった。
 それが安倍晋三(安倍派)以後の自民党は、「多数を制すれば黒い鴉も白い鷺だ」ばりの虚偽と没論理で、「募ったが募集はしていない」的な暴論で、理性への挑戦を繰り返してきた。
 それを笑っていてはならない。
 政治的には、「政治の世界は無茶苦茶だ」と庶民が冷笑すればするほど彼らの思う壺である。

 奈良県立図書情報館のコーナーには、関東大震災時の朝鮮人や中国人虐殺に関する書籍がいっぱいあった。奈良県にしてこうである。
 官房長官が歴史に学んで未来の人権を考えようと思うなら、この種の記録は関東には山のようにあるだろう。
 それを彼は、「記録はない」と言い放ったのである。

 ちなみに私の父は先の敗戦時「松下飛行機」のそこそこの幹部社員であったが、敗戦時にそれこそ山のように、「軍と名の付くもの」は文書からゴム印まで徹底して焼却したことを子どもである私に語っていた。
 ならば、記録がないから松下飛行機は軍と関係なかったのか。そんな馬鹿なことはない。それを「なかった」かのように言うのは理性への挑戦である。官房長官の論もそうである。

 平成20年3月に内閣府の中央防災会議の専門調査会がまとめた「過去の災害教訓」の報告でも、朝鮮人らへの虐殺は記録されている。官房長官こそ歴史修正主義者と言わなければならない。

 冒頭の奈良県立図書情報館の展示のメーンは、直ぐに帝都に派遣された奈良県土居章平理事官(後には各県の官選知事)の報告である。以下に関係部分を記載する。
 🔳 鮮人とさへ見れば市民之をなぐり殺し 軍隊迄之を銃殺する有様にて 警視庁は之を保護旁々収容致し折り候。🔳

 写真の絵画は教員画家大原彌一の作品で、「この震災を経験しなかった人々に省慮の念を促したい」と記していた。(赤旗9月1日号から転載)

 繰り返すが、いろんなレベルの違いはあるだろうが、普通の庶民が寄ってたかって罪のない人々を虐殺したのである。
 コロナなどで見た同調圧力の向こうにこの光景を想像するのは心配しすぎだろうか。東日本大震災でも流言蜚語はあった。
 
 朝日新聞の小薗崇明(公益財団法人政治経済研究所研究員)の小論の中に、朝鮮人を特定するのに「15円50銭」の言葉が使われ、流暢に発音できなかったならば朝鮮人として殺されたことが書かれ、日本人でも聴覚障碍者が犠牲になったという。
 もし、明日にでも大災害が起こったならば、私の孫も犠牲になる可能性がある。
 かくして私は松野官房長官や同様の主張をしている小池東京都知事を許すことができない。

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