2016年2月17日水曜日

バーニー・サンダース

 20151018日日曜日に「米国の民主主義」というタイトルで次のように書いた。
  マルクスとリンカーンが心のこもった書簡のやりとりをしていたことは有名な話(アメリカ合衆国大統領エーブラハム・リンカンへ〈マルクスエンゲルス全集16巻〉ほか)だが、そのことを思い出させるような米国の民主主義に感心したことがある。
 14日の夜に見るともなくテレビニュースを見ていると、大統領選挙に向けた米国民主党のテレビ討論会が報じられていて、ヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダース氏が映っていた。
 私が感心したのはサンダース氏の発言で、「米国の下位90%の人たちが持つものと同じ富を上位0.1%が独占しているのは不道徳で間違っている」「一握りの億万長者から政府をとり戻す」と、ウォール街と大銀行の行き過ぎを規制する決意を述べていたことで、米国民主党の候補者選びの段階とはいえ、こんなまともな意見が全米にテレビ放映されるという米国の民主主義に敬意を感じた。(なおクリントンも基本方向を否定せず「私の方が上手くやる」と対応した)
 先日我が国では、政権与党の総裁選で首相に対抗する候補者潰しが行われて無投票となり、引き続く内閣と党役員改選では立候補しようとした野田氏所属の派閥が干されたというニュースがあったばかりである。

 世界の憲兵面(づら)をした米国を不問に付すつもりはさらさらないが、彼の国ではTPP反対の声も小さくなく、フクシマ型のピルグリム原発の廃炉を決め、ニューヨークにまで来た安倍首相にオバマ大統領が会見すらしなかったことに、米国民主主義とジャーナリズムの片鱗を垣間見た気がする。
 サンダース氏は現代を「カジノ資本主義だ」と述べているが、片やこの国では規制緩和、官から民へ、小さい政府という大合唱に大手マスコミが同調し、結局先に述べたような米国や先進諸国の真の姿を伝えもせず、日本を代表するような東芝、三井不動産、旭化成等々の不正問題を構造的に解明しようともせず、武器輸出、原発輸出を称賛し、勤労者のセーフティーネットの破壊を看過している。大阪をカジノで豊かに・・など論外だろう。
 そう考えると、この国には、民主主義革命、市民革命が喫緊の課題となっていないだろうか。
 
立憲主義をメーンテーマにした国民連合政府構想を本気で考える秋である。
(引用おわり)


 このとき私は、どうせ緒戦で消えるにしても画期的ではないかと感動しながらこの記事を書いていた。
 ところがご存知のとおり2月1日の中西部アイオワ州でクリントン氏49.9%、獲得代議員23人に対してサンダース氏49.6%同21人と互角に戦い、9日のニューハンプシャー州ではクリントン氏38.0%対サンダース氏60.4%と圧勝した。
 広いアメリカ大陸のことであるから予備選挙の行く末など私には解らないが、大企業や大富豪への課税の強化、最低賃金15ドル(1800円)、公立大学授業料無償化、国民皆保険等々の公約へのアメリカ国民の支持は、我が国自公政権の政策をみすぼらしくしている。凄いことではないだろうか。
 氏は、自ら「民主社会主義者」と名乗っているが、アメリカでの「社会主義者」という語調は日本のアカ攻撃以上と言われたりしているから、超大国の社会の土台のあたりで驚くような地殻変動が起っているようだ。
 お恥ずかしい話だがニューハンプシャー州といってもイメージが湧かず、地図帳を開いてみたら、ニューヨーク市やボストン市にも近い東部の州だった。
 サンダース氏の地盤の隣の州ということもあるようだが、それにしても、南部や西部の片田舎の州(失礼)でたまたま起こったハプニングではないようで、もう片方にはトランプ旋風というとんでもない現象を抱えてはいるが、興味がさらに深くなる。
 それにしても、格差社会に強烈なNOを突き付け始めているアメリカの変化を正しく報道もせず、トランプ氏と抱き合わせで「社会は両極化している」とか「理想主義だ」という程度の論評でお茶を濁し、相も変わらずウォール街のお先棒を担ぐアベノミクスを持ち上げようとするこの国のマスコミの劣化はひどい。

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