2015年7月6日月曜日

抑止力について

  『戦争あかんで!相楽ネット!』発足の集いがあり、京都第一法律事務所尾﨑弁護士の講演があったが、私が興味を抱いたのは次のようなフロアからの参加者の声だった。
 曰く、『自分の子どもに戦争立法の話をしたが「そしたら日本が攻め込まれたときにどうするの?」と尋ねられて上手く返事ができなかった』というもので、非常に世の中の現状を反映しているように私は思った。
 そういえば、その集い自身が圧倒的に元気な高齢者で埋まっていて、若い人々の参加は少ないものだったから、高齢者の「正しい主張」が若い人々に思うようには広がっていない事実があることを軽視できない。
 確かに、政府与党の情報操作もあるにはあるが、同時に、北朝鮮による核開発、ミサイル実験、そして拉致問題があり、中国による尖閣諸島周辺の示威行動や南沙諸島での実力行使があるから、そういう疑問があって当然だし、一概に「理解が浅い」というものではないように思う。だから、私ならどう答えるだろうかと思うと偉そうに答えられる自信もない。
 さて、それについては講師も返答されたが、ほんとうに侵略が起こったならば結果的に反撃したとしても相当大量の日本人が死ぬことになるだろう。
 私などは若狭の原発銀座周辺にミサイルが1発落とされれば淀川水系の関西は壊滅すると思っている。
 戦争になったら・・・・・、勝っても負けても、その時に私が生きているかどうかは判らない。
 だとすれば、どんなことがあっても戦争にさせないことが最重要課題で、政府与党のいうような法制度も含めた重武装化が有効な抑止力になると考えるかどうかが焦点であろう。結論を言えば私はそうは思わない。
 比喩で言えば、いくら武術の高段者であっても理性的な人を他人は無闇に恐れないと思う。
 それよりも、感情が直ぐにキレるチンピラの方が何をしでかすかわからないから世間では怖い存在である。この比喩は常識的に納得していただけると思う。
 だから、『日本は戦争しないが抑止力として軍備を増強している』分には誰も怖がらないので、ほんとうに抑止力を効かせようとするなら、米国のように時々キレる必要がある。
 この話は相手も同じことになるから際限のないゲームになる。
 かつて冷戦時代に唱えられた「瀬戸際作戦」である。
 抑止力論とは畢竟、軍備増強による瀬戸際作戦となり、それはつまらぬ行き違いで戦争を誘発する道であろう。戦後アメリカによる数々の戦争がそうであった。
 結論を言えば、安倍内閣の外交力落第、軍事一本槍の姿勢こそが一番の日本の危険要因である。重ねて言うが『戦争はしないが法制度を含めて軍備を増強して戦争を抑止する』という論は現実社会では成り立たない。
 次に、NHKの討論番組で自公の代表は「戦争立法によっても自衛官のリスクは増えない」と発言したが、それが詭弁であることはすぐに明らかになった。そしたら「自衛官のリスクは増えてもそのことで国民のリスクは減る」と減らず口を叩いたがそうだろうか。
 解りやすく中東をイメージすれば現在の戦争は誰が兵士で誰が非戦闘員であるか分かちがたい戦争であろう。つまり、非戦闘員である一般庶民の犠牲が避けられないし、そのことが次のテロを生む温床になっているのが現実だろう。
 つまり、例えば中東で「積極的平和主義」のキャッチフレーズで行う戦争は、日本国内でのテロのリスクを格段に高めるだろうと私は思う。国外の邦人のリスクの高まりはいうまでもない。
 そのNHKの討論番組で共産党の志位委員長が、「ASEANが東南アジア友好協力条約を結んで、主張の違いは外交で解決しようと約束したように、外交の力で北東アジア平和友好条約を締結しよう」と訴えた方向こそほんとうに理性的で現実的な日本の選択肢だと私は考えるが如何だろう。
 読者の皆さんなら、最初の子どもたちの質問にどう答えられるだろうか。ご教示いただければ幸いである。

3 件のコメント:

  1.  私がこの記事を書いた問題意識は、安倍首相や橋下市長等の内容のない行き当たりばったりの主張にいちいち付き合っていられないが、彼らのワンフレーズが結構庶民に浸透している事実も軽視してはならないのではないかということで、事実、一定の人々の間ではすんなりと理解し合える理屈(言葉)が、どうも十分には青年たちの心にまでは届いていないということはないかという問題意識。
     もちろん、「新聞も読んでない青年はあほや」ではすまないし、ボールは高齢者の方にありはしないかというもの。
     理路整然と確信を持って説かれる言葉ほど青年の胸に届いていないように感じるのはおかしいでしょうか。
     

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  2. この問題は、北東アジアの非軍事化をめざすという目標を立てて進めばよいだけの話で、その目標に各国が反対するはずもないのですが、その簡単な目標をはっきりと示さないから話が変になるのだと思います。さらに言えば、北東アジアの関係6か国中、日本が平和条約を結んでいるのは中国、韓国と若干変則的な条約ですがアメリカであって、日本はまずロシアと北朝鮮と平和条約を締結すべきですが、それどころか、平和条約を結んでいるはずの中国を、友好国としてとらえず、脅威と煽っている有様です。ものの考え方が根本的に間違っています。中国は日本との平和条約締結国ですが、この間、全く報道されません。その事実を抜きにしてパワーゲームの感覚しかないから、ロシアも中国も同じになってしまうのです。

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  3.  mykazekさん、あなたのコメントも目から鱗の素晴らしさです。参考になります。
     ほんとうに、おっしゃる通りです。
     とすると、日本のマスコミというのも何というレベルなのでしょうかね。

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