2014年11月19日水曜日

消費税は福祉を壊す

  安倍自民党の口ぶりだと解散総選挙の争点は「消費税再々引き上げの1年半延期の諾否」と言いたいらしい。自民党に投票してくれたら延期、そうでなければ即引き上げかのように騙し脅している。いつもながら詐欺師さながらのロジックだ。
 そして情けないことにマスコミはその不当性を指摘するのでなく、延期に反対している野党がないのだから争点の無い選挙だというピントのボケた論評でお茶を濁している。
 そもそも消費税10%は自公民3党合意の産物だし、維新やみんな等も基本的に推進してきたものだからマスコミの論評も一見したところそのように見えるが、現在の経済状況が明確に示している通り、争点は共産党のいうように「消費税引き上げは延期ではなくきっぱり中止」かどうかだと思う。
 では、消費税を10%にせずに社会保障は推進できるのか、景気は悪化しないか、財政赤字は破綻しないか、ここの展望が重要だ。
 景気については、結局のところ消費不況であって、消費者の懐(賃金等)を温めないと幾ら金融政策を連打してもどうにもならないことが明らかになった。ズバリ、賃金抑制と消費税こそが景気を冷え込ませているのであって消費税を廃止する方が景気は回復するのである。
 なら、社会保障と財政はどうか。
 冷静に考えれば、現在は不況だといっても経済規模は20数年前と比べるなら大きくなっている。にもかかわらず20数年前の税収が上げられていない。理由は、税収の上がらない税制、つまり・・・・・「法人税を下げないと企業が海外へ行ってしまう」という大嘘に乗って、消費税を基幹にした税制にしたからである。
 そうしておいて、「事業仕分け」だとか「公務員の定員削減・非正規化」で財政赤字が解消できるかのようなデマを流してきたからである。自公だけでなく民主もそうだ。
 「海外へ逃げる」論についていえば、企業自身が言っている通り、その判断のポイントは立地先の需要であり、法人税が高いから海外移転するわけではないし、法人税を安くしたって逃げる時は逃げるのである。それであっても本社に還流された所得には税を負担させることができるから、それはそれでどうにでもなる。
 大企業が「円高になったら海外へ行く」とか「法人税を下げなかったら海外へ行く」というのは雇用問題を心理的に人質に取った使い古したブラフ(脅し文句=こけおどし)である。
 そもそも、所得税と資産税を中心とした税制こそが公平な税制であり、民主主義的税制の伝統的な原則であった。
 そういう応能負担型の税収と財政構造こそ所得の再分配という効果を生み福祉国家をつくるのだ。国家の機能とはそういうものだ。
 そういう「垂直的所得再分配」に対して、消費税を中心にすれば「水平的所得再分配」になり、『国民総痛み分け』にしかならない。
 残念ながら、小泉氏や安倍氏に群がった「新自由主義」経済主義者だけでなく、民主党のブレーンになった「ポスト福祉国家」論者も「グローバル経済の下では法人税よりも消費税が取りやすい」という理由でこのように税制をゆがめてきたことが今日の経済・財政の行き詰まりを招いているのである。
 この「垂直的所得再分配」は国のレベルでしかできないから、道州制だとか何でもかんでも地方分権というアジテーションに乗ると、「国民総痛み分け」をベースにした恐ろしいほどの格差社会が生まれるだろう。堤未果氏の「沈みゆく大国アメリカ」等のシリーズを読めばわかる。
 争点は共産党のいうように「消費税再引き上げはきっぱり中止」だし、その先には穏やかな福祉国家が見えてくる。
 重ねて言えば、消費税を上げれば福祉が充実するのでなく、消費税中心の税制こそが福祉を破壊するのである。
 日本共産党は応能負担の税制を主張している。
 (この記事は、二宮厚美神大名誉教授の講演記録を参考にさせていただいた。)

4 件のコメント:

  1.  消費税は、景気を冷え込ませ貧富の格差を広げる庶民の敵の税制だと思います。長谷やんの主張どおりだと思います。そう思っている方もたくさんいると思います。今度の選挙ほど庶民を馬鹿にした選挙はないと思います。政府は「貧乏人よ消費税が10%になるのをを1年半延ばしてやるから政府を信用しろ」と言っているようなものです。なんとかギャフンと言わせたいものです。
     話は変わりますが、私の友人で退職金を叩いて太陽光発電を建設した人がいます。政府は2年ほど前は、「原発が止まっているので節電しないと電気が止まる。」と大騒ぎしていました。今、電力会社は、「電気が余っているので、太陽光発電の購入料金を大幅に下げる。」という始末です。私も騙されかけた一人です。

    返信削除
  2.  首相は18日の会見で「再延期はない。はっきりと断言する」と2017年4月に10%にすることを明言しました。この部分が一番明瞭でした。だから争点のひとつは「延期の是非」ではなく「再引き上げの是非」です。
     家計の収支でいえば当分の間太陽光発電は儲かりません。だからお金がないこともあり我が家には設置していません。しかし、未来社会に向けてエコエネルギーに取り組んでいるという自己満足と自己顕示のためにお金を使ったと考えたらいいのではないでしょうか。友人に伝えてあげてください。
     

    返信削除
  3.  是非を問うと言うのであれば5%から8%にする時に問うべきであったと思うが、いずれにしても消費税値上げ法の景気条項とっぱらって17年4月に10%に上げると断言しました。同時に与党が過半数を獲得できない場合は退陣するとも言っています、頑張って過半数割れに追い込みたいものですね!

    返信削除
  4.  秘密保護法にしても集団的自衛権にしても国民に是非を問う課題はいっぱいありましたが一切無視していた首相が今回言う「是非を問う」の言葉の何と嘘っぽいことでしょう。
     現有自民295、公明31、計326を過半数238まで88減らしても勝利宣言をして続投すると言ったわけですから、常識人の思考回路からぶっ飛んでいます。
     こんなおかしな首相に国の梶取を続けさせてはなりません。

    返信削除