2013年1月1日火曜日

頌春

  私が絵付け(の真似事)をした奈良の伝統工芸品である一刀彫の「巳さん(みいさん)」をここに掲載して皆様方の新春を言祝ぎたい。・・と、「寿ぎ」の押し売りをする。
  嘘でもよいから、ここは「こいつあ春から チョン 縁起がいいわえ」 と応じてもらいたい。
  奈良の一刀彫は平安後期に春日若宮おん祭に使用された木彫人形に源があり、能人形、雛人形、五月飾り、干支、鹿が彫られていて、このほかの題材は「奈良一刀彫」とは言わず単に「木彫」と呼ばれるようだ。(そんな薀蓄は知らなかった。)
  この写真の巳さんの材質は高級品ではないが、切口から素晴らしい香りの漂う楠である。
  「なら工藝館」の先生に「私も彫らしてほしい」と言ったが「必ず手を切るから」と、それは叶わなかった。これは誇張でなく工藝館の教室のたびに救急車が必要なほどの怪我人が出るそうで、労働災害関係の知識からすると、ここは安易な真似仕事はしないほうが善いと引き下がった。
  しかし、胡粉(ごふん)を膠(にかわ)で溶いて磨り潰したり、絵付けだけでも結構な作業で、これに岩絵具や金箔まで使用すると、あの結構な完成品の値段もなるほどと納得できる。
  「もっとリアルに彫りたくないですか?」と質問したら、「リアルな木彫は簡単だが、このデフォルメされた鑿(ノミ)跡の残る切口で躍動感や重厚感や静寂感を表わすのが難しい」との回答。現に、先生(作家)の一刀彫ではない方のリアルな木彫は見事な出来栄えだった。ふ~ん、そういうものなのか。ちょっとだけ目から鱗。
  正直に言うと私はこれまで奈良の一刀彫について、「あまりに彫りが粗すぎる」「彩色が木彫の好さを消している」「高価すぎる」とあまり好印象は持っていなかったが、ほんとうの職人(作家)の話を今回聞いて、心の底から反省した。先生に「こんな高額で何方(どなた)が購入されているのですか?」などとほんとうに失礼な質問をしてスミマセン。
  芸術にしても工芸品にしても政治にしても、近頃は紛い物が多く、かつそれが見事にホンモノであるかのような嘘や錯覚やムードがあるが、新しい年はじっくりとホンモノを応援したいと考えている。
  今年はこのブログも、「一見それらしい常識を疑いホンモノを探す」というのをサブテーマに据えようかと思う。
  後ろで妻が、「お父さんの話はいつも大袈裟やねん」とチャチャを入れているが。

  ・・・・今年はコメント欄がフォーラムのようになればと夢見ている。どうかよろしくお願いします。

2 件のコメント:

  1. さすが長谷やん!年女が早々に巳さんお彫り物にお目にかかれるとは縁起がいいです!今年はいいことがありそう(*^_^*)

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  2.  yukuriさん おめでとうございます。
     つまらないことですが天候によって気分は大きく左右されます。・・・で、今年の元旦は爽やかです。本年もどうかよろしくお願いします。
     今年第一番目の行事は先ず大福茶。到来物の梅昆布を新しい煎茶でいただきました。
     「先ず大福茶」というのは自分でも気に入っている我が家の「しきたり」です。

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