「そんなの文句なしに松茸やろ」と夫婦で言うと、外泊中の義母がボソッと「松茸なんか匂いだけや」と否定した。
おおっ! さすが生駒谷の山持ち地主の娘。山で採ってきた「シメジやイグチ、ハツタケ、ナメコ、自然のシイタケの方が美味しかった・・ 松茸なんかほとんど食べなんだ」との発言には重みがある。
各種きのこは、そのまま鍋に入れたり、きのこご飯にしたらしい。
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「やっぱり昔から松茸は値打ちが認められていたんや」と夫婦で笑いあったが、義母の言う「味は他のきのこの方が美味しかった」という評価は、世間の金銭的雑音がない分正確なのだろう。
「魚なんか滅多に食べなんだ 畑や山で採れるもんばっかり食べていた」という、こんな自給自足の生活が私の親の子供時分まであったなんて、私の子供たちにだって、もう歴史教科書の世界だろう。
この貴重な経験を聞き残しておこうとするのだが、義母はいつも「別に何もありません」と答えるだけである。
考えてみると、その時代の普通の農家で普通に農業をしていたのであって、本人にとっては何の珍しくもない生活を積み重ねてきただけだ。それらを知らない我々の世代以降のほうが、日本民族の中で突出して珍しい世代なのかもしれない。
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