2011年8月20日土曜日

世界記憶遺産

 今朝の朝刊に「作兵衛の世界(上)」が大きく取り上げられていた。
 提灯をかざしたり太鼓を叩いたりするほどの筆力はないが、購入して損のない本であると推薦したい。
 「あゝ野麦峠」もそうだが、苛烈な歴史をくぐり抜けてきた実話には予想外の明るさや定説とは微妙に異なる事実があるのが面白い。
 「人柄のよい将校もいたからあの戦争の全てが悪かったわけではない。」というような、大局観のない歴史観は全くいただけないが、「かつての民衆はただただ虐げられていた。」で済ますのも正しい歴史の学び方ではないように思う。
 例えば、『昭和初年、女子の坑内労働が禁止されてから職場にみられた濃密な人間関係も薄れていった。男の労働者たちは、炭鉱に潤いがなくなったといってはぼやいた。江戸時代末期から、明治・大正にわたり男たちの支えとなりながら忍苦に満ちた仕事をひきうけてきた女子労働者は、人道の名の下に職を奪いとられたのである。』『長らく坑内で働いた者(女坑夫)には太陽の下の労働はかえって苦痛となるものです。』という件などは学者には書けない文章ではなかろうか。
 余談ながら、ここに登場する炭鉱主の子孫が首相になったことを知っている我々は、この本(絵)をみながら作兵衛よりも気が沈む。
 ♪ 唐津下罪人のスラ曳く姿、江戸の絵かきもかきゃきらぬ
 

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