2015年3月19日木曜日

キャンプ場でないという真実

  写真はネット上の「画像」で見つけたものだが、私の言わんとすることにほゞ間違いないと思う。
 堤 未果(ジャーナリスト・作家)さんの『沈みゆく大国アメリカからの警告~未来への選択~』という講演の冒頭にプロジェクターで映されて見たテント村である。
 これが人気のキャンプ場ではなくロス郊外の公園であること、そしてアメリカのすべての州の公園にこういうテント村が現在生まれていることを私は知らなかった。
 3月8日の記事で、 私はABE首相の吹き出しで「汚染水はコントロールできないが、情報は完全にコントロールできている」と書いたが、ほんとうに私もコントロールされている一人であった。
 これは生活保護を5年満了で打ち切られたホームレスのテント村で、このように急増しているホームレスは政府統計の失業人口と失業率から排除されるため、アメリカのほんとうの失業率は20%ぐらいと言われている。
 失業率20%と聞くと「何かの間違いだろう?」と思ってしまうが、生活保護受給者が6人に1人、定職なしが10人に6人、医療破産(保険に入っていたが破産した人)が年に90万人、学資ローン破産が500万人、フードスタンプ(一種の生活保護)受給者が5000万人と数字を提起されるとそうなのだろう。
 講演後に高名な元大学の先生が、「1960年代などには夢の国、自由と民主主義の国であったアメリカがどうしてこうなってしまったのだろう」と若き日の留学先について述懐を込めておっしゃったのが印象的だった。
 堤さんの講演は、健康保険制度のなかったアメリカの医療制度の問題点、アメリカ版皆保険(オバマケア)はそれを変更できなかったことを数々の事実で解き明かしてくれた。
 オバマケアは皆保険といっても多種多様な民間保険であること、だから、保険に入っていてもお金が下りない、治療が受けられないことが日常茶飯事に起こること、病院に行かずに売薬で対処しようとしての薬の誤服用等の事故者が年間7万人以上いること、れっきとした大企業のホワイトカラーでもひとたび大病に罹ると破産まで行くことが珍しくないこと、等等々。
 それは、軍需産業以上にアメリカで一番政治力のある医療・薬業業界の献金攻勢が作った社会であり、日本の医療保険制度の根幹にある不十分ながらも社会保障の概念がアメリカにはなく、医療も薬価もただの【商品】にした結果であると堤さんは述べた。
 もちろん国民向けには、「福祉を行政が行なうと無駄が出る。民営化すれば効率がよくなりサービスが向上する。いろんなニーズに応える選択肢が広がる。そうして国際競争力に打ち勝つのだ。」と、レーガン以降言ってきたのであると。
 翻って日本の未来の選択を考えるとき、規制改革、特区、民営化、行政改革、TPP等、自民党や維新の党の主張は沈みゆく大国の政策の100%焼き直しである。つまりは国家以上の多国籍企業(薬業や保険業界その他)の手先だと私は思う。
 この先には、金がなければ治療を受けられない国、それに絶望したときには安楽死薬(自殺薬)が保険で買える国(アメリカの幾つかの州ではそうなっている)が待っている。
 やたらに「無駄だ」「規制改革だ」「民営化だ」と語る人間には注意しなければならない。
 「貧困大国アメリカ」等堤未果さんのレポート(新書や文庫本)は現代人必読のレポートだと思う。
 読者の方々には、まだの方は時間と本代を投じてもらいたい。

 以前に私は、混合診療はそれほど悪くないのではないか、選択肢が増えるのは悪くない、現行制度にはいささか硬直した部分がないか・・と思っていたときがあった。
 しかし、それはアリの一穴であり、最新の治療を受けたければ自費で対応せよ、それが怖ければ民間保険に入れ・・への地ならしになるだろう。事実、C型肝炎の新薬ソバルディのアメリカでの薬価は1クール12週間で84,000ドルである。この事実をどう考えよう。破産するか、治療を諦めるか。
 薬価を含む国民皆保険制度を守らなければ、そういう社会が口を開けて待っている。

3 件のコメント:

  1.  私が感銘を受けた氏の著書は次のとおりです。
     ~報道が教えてくれない~アメリカ弱者革命 新潮文庫
     ~ルポ~貧困大国アメリカⅡ 岩波新書
     政府は必ず嘘をつく~アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること 角川SSC新書
     (株)貧困大国アメリカ 岩波新書
     沈みゆく大国アメリカ 集英社新書

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  2. 私も、高齢者の例外にもれず生活習慣病一式持っています。完治は100%ありません。合併症をおこさず注意するしかありませんが、1月に1回病院通いで投薬と検査を」交互に繰り返しています。病院は共済病院でずっと院内処方の薬でした。昨年暮れから院外処方せん移行のお知らせがあって「これはやばくなるな」と思っていましたが、とうとう3月より外来患者の薬の院外処方が行われました。これまで薬代は1月で5,100円程度でしたが薬局処方では同じ薬と同じ日数分で6,300円。病院の処方せん代が500円追加で約1、700円の負担増です。年間2万円にもなります。多分こうなる事と予想はしてましたので病院に言っても国の「医薬分業」の指導に抗しきれなかったようですし、薬局に苦情を言ってもご意見ごもっともで「後発薬」を推奨されました。これを使うと成程若干安くなりますが、そもそも「医薬分業」の考えが薬局業界の利益の為としか思えません。今、ほとんどの病院は院外処方ですから国の施策で薬局業界の為に高い薬代を負担している事を知らなければと思っています。

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  3.  素晴らしいレポートをありがとうございます。
     アメリカの投資家たちは日本の医薬・介護部門を優良投資商品として鵜の目鷹の目で狙っています。
     情けないことに、そこへこの国と国民を売り渡し、その駄賃で儲けようという政治家がいっぱいいます。
     ほんとうに事実を知ること、知らせることがとても大事だと思います。

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