2014年6月24日火曜日

人間の気儘

ウメエダシャク
  他国には蝶と蛾を区別する言葉がない国も多いそうだが、もちろん我が国には蝶と蛾がいる(蝶と蛾が区別されている)。
 そして、平均的な日本人は、蝶と聞くと可愛いと言い、蛾と聞くと気持ち悪いと言う。
 そもそも蝶に比べて蛾とは何ぞや?と聞くと、蛾は昼に飛ばずに夜に飛ぶ、蛾は翅を広げたままとまる、蛾は胴体が太い、触覚の先が丸くない、等々と、冷静に考えるとおよそ学術的なものではない。一言で言ってそれは人間の気儘でしかない。
 先日書いたオオスカシバを蛾だと知っている人も少ない。

 といって、全く意味がないかというとそうでもなく、市街地で出会う蛾は、昼に飛ぼうが、翅を立てようが、胴体が肥満でなかっても、論理的な思考以前に、どこか可愛く感じられないから不思議である。・・・と感じる私は全くの凡人なのだろう。
 写真はウメエダシャクという蛾で、遠目では、とまっている姿はホシミスジという蝶とよく似ている。

ホシミスジ蝶
  しかし、ウメエダシャクがどこからともなく湧いてくるように大発生し、黄泉の国の使いのようにゆらゆら・ふらふら漂うと、一言でいえば気色悪いほどである。先日来そういう状況が我が町(と庭)で生まれている。
 3歳の孫は捕り易いので喜ぶが、感覚として文句なしに蝶ではなく、蛾と言われて異存はない。立居振舞いが蛾である。
 幼虫は尺取虫の一種らしく毛虫ではない。
 ウメエダシャクの子かどうか知らないが1.5センチほどの小さな尺取虫が、まるで親指と人差し指で長さを測るような動きに似た動作で健気に進んでいるのも可愛い。
 また、樹木を丸裸にするほどの食害も感じられない。
 だから私は、孫が来たときの昆虫採取ように放っておいている。
 ウメエダシャクが群舞している庭を見て、道を通る方々が好意的に自然を感じるか、手入れをしていない害虫の温床だと眉をひそめるかは解らない。
 現代人は、昆虫の知識以前に、蝶に抱く感覚、蛾に抱く感覚というような生物としての基礎能力をも失っているから、まあ、ほとんどのお方は昼に飛ぶ蝶だと思っているだろう。

 蝶に似た蛾のような法律がいっぱい成立したし、毒蛾のような閣議決定も議論されている。
 社会問題を峻別判断する能力も大事なことである。

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