2014年6月6日金曜日

どんぐりの食文化

 「どんぐりの食文化」というテーマの講座があった。もちろん面白そうだったので受講した。
 どんぐりが非常に優秀な食材であること、縄文の遺跡からも食事の事実が認められること、粉砕→水洗→あく抜き→乾燥→どんぐり粉→クッキー・団子・粥というように調理したこと・・等々の話でそこそこ面白かった。
 しかし正直にいえば、それらの話はほとんど知っていたことだったので、私にはあまり新鮮な話題ではなかった。
 それに、(どんぐりの中の)シイについては粉にせずとも食べられるから、実際、お祭りの屋台でも煎って売っているから、もっと普通に食べていたのではないかと私は思うのだが、私の質問にも講師の話は「粉にする、あく抜きをする」というようなワンパターンの回答に終わったように感じられた。
 だが、知識として講義を聞きに来ていた方々には新鮮な話題であったようで、ホワイトカラーOBのように見受けられる会場の多数の雰囲気はそうだったから、その雰囲気を私が壊す必要もなかった。
 私は、一番興味のあった「あの渋味は、あく抜きが不十分であった場合に毒性があるのか?」ということを質問したが、答えは、「あの渋味の成分はタンニンで毒性はないどころか、今はやりのポリフェノールである。」とのことで、私限りでは嬉しい回答だった。
 他の人は、今さら食べてみようとは全く考えていないようで、知識としての「どんぐりの食文化」を机上で学ぶことに満足しているようだった。教室の雰囲気はそうだった。
 だから、2013.11.23のマロングラッセの記事に書いた、私の、語るも涙の「クヌギ グラッセ」の実践レポートは話すのをやめておいた。

  ただ、私にとって新鮮な知識といえば、どんぐりの食文化が現代の朝鮮半島には残っているという知識だった。これは初耳だった。・・・・・なので、その数日後、大阪に出た時に鶴橋駅西口に降りてみた。(先日火事のあった場所近く)
 で、朝鮮料理店に順番に首を突っ込んで「どんぐり豆腐の料理はありますか?」と聞いて回ったが、「どんぐり豆腐はどちらかというと夏の料理やし、それに、この周辺で出している店は知らんなあ」という答えばかりだった。(御幸通りのコリアンタウンにはありそうだったが。)
  ならばと、鶴橋マーケットの方で「素材としてのどんぐり豆腐」を探したが、これもおいそれとは見つからず、それでも庶民的な街だから、「うちには置いてないが、あの辺にはあるやろう。トトリ ムと尋ねなさい」という話を継ぎ足継ぎ足ししてようやく手に入れた。
 300円ちょっとの安いものだし、「美味しい食べ方を教えて?」と聞いたら、特製のタレもサービスしてくれた。高木商店という店だった。 
 どんぐり豆腐はトトリ ムといい、ムッという感じで発音したらよく通じた。
 このトトリ ムの原材料名は「どんぐり粉、水、食塩」だけというシンプルさで、キャッチコピーが「仙人の不老食」だった。
 (トトリ=どんぐり)(ム=でんぷんをゼリー状にした食品の総称)らしい。
 食感はごま豆腐のようなもので、味はほんのわずかな渋味以外何もなかった。
 私は、豚キムチ、サンチュ、白髪ねぎ、ミニトマト等をトッピングして、店からいただいた「ごま油醤油?」でハツモノを楽しんだ。 
 朝鮮料理という概念を取っ払って、普通のサラダの素材のひとつにするのもいいかもしれない。
 ああ!あの「クヌギ グラッセ」に比べてなんと簡便なことか。簡単すぎる。
 私はどんぐりの食文化としてはクヌギ グラッセに軍配を上げたいが、それは自分の投入した苦労に対する単純な自己満足だと解っている。

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