2012年12月16日日曜日

国破山河在

  今年は、この国に現存する最古の書物といわれる古事記が編纂され、太安麻呂が元明女帝に献上してから1300年になる。
  この栄誉ある最古の書物は、奈良県(庁)の古事記出版大賞を受賞した別冊太陽『古事記』登載の大塚ひかり氏の記事に言わせれば「セックスとうんこだらけ」の物語(千田稔氏に言わせると「戯曲」)であるが、そういう物語が皇国史観の教科書となって戦時体制が築かれていったのであるから、戦後生まれの者には信じられないが教育の統制というのはそら恐ろしいものである。

  さて同じ年、つまり1300年前の712年は詩聖杜甫が生まれた年であり、今年は杜甫生誕1300年でもあるのである。
  それを新聞で知って私は、彼の文字の国、書物の国とその辺境の島国とのあまりに大きなタイムラグに愕然とするのである。
  そして・・・・・、辺境の国はその文化度において文字の国に追いついたのだろうかと考えた。

  荒っぽい言い方だが、文字のない時代の歴史は考古学が、文字以降の歴史は文献史学が主として担っているが、その歴史時代(文字時代)の初期の文字(木簡)の宝庫が平城宮跡で、今も地下の水脈により「地下の正倉院」といわれるように『保管?』されている。その価値は計り知れない。

  ところが、そもそもの発信元は奈良県知事だと推定されるが形式的には国土交通省が、イベントがしやすいように?と言うことだろうか、秘密裏にここを広範囲に舗装し始めている。
  浸水性がある舗装というのだが、すでに舗装された大極殿前には草1本生えていない。
  砂利がひかれているが私が靴で払ってみるとその下はしっかり舗装されていた。
  京奈和道トンネル工事案もしかりだが平城宮跡の木簡は文字どおり危機に瀕している。
  水が涸れると木簡は朽ちてしまう。
  木簡が眠っているからこその世界遺産なのに・・。
  私は、現代中国の政治体制や民主主義の度合いについては大いに批判的意見を持っているが、それを偉そうに見下しているこの国の為政者たちのかかる文化の軽視には、白頭を掻いて涙が止まらない。
  (杜甫に釣られて結びの文章が大袈裟になって自分自身で笑っている。ほんとうは涙は出ていない。)

2 件のコメント:

  1. はじめまして

    今朝たまたま高の原に行く用があり佐紀町の大極殿の後ろの道を車で通りました
    手が届きそうな距離でした 遠くに朱雀門が見え 人っ子一人居ない広さに感動しました

    工事が始まっているようですね 諸事情があるのでしょうが残念な気がします
    運転している
    夫も橿考研 有志会で古事記を読んでいるので同じように残念がっていました

    古事記1300年の今年はいろいろお世話するのに大忙しでした 今年も後少し 太安麻呂さんもお忙しい事だったでしょう

    来年は少しゆっくりして下さいね 勿論 夫にも
    もう年ですから ごめんなさい


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  2.  はじめまして。瞬時のコメントありがとうございます。
     千年単位の歴史を考えたりすると、目先の経済性なんてあまりにちっぽけなもので、それらの破壊などもってのほかだと思うのですが、現代人はその程度にスケールが小さくなったのでしょうか。
     私は千年単位の夢を楽しみたい。

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