2014年7月19日土曜日

奈良公園のエコロジー

  奈良公園の生態学(エコロジー)を谷幸三先生から聞く機会があった。
 先生は探偵ナイトスクープの生物の先生である。
 奈良公園のシバは生産者、シカは消費者、フン虫・バクテリアが分解者のそれぞれ代表で、その生態網(エコネット)が見事なシステムを作っているという話だった。
 奈良公園のシカは約1200頭(直近に1350頭と報じられたが)で、そのシカの糞の量を先生は実測した(その奮(糞)闘記も楽しかった)らしいが、年間約330トン(乾重量で79トン)だから公園中糞だらけになるところを清掃してくれているのが約40種類のコガネムシで、中でも奈良公園と大台ケ原(紀伊半島)だけにすむルリセンチコガネは「糞を食べて何故これほど綺麗になるのか」というほどのものである。

  この仲間のスカラベ(聖タマオシコガネムシ)はエジプトでは神になり王様の印章にもなった。
 先生の言うのには、糞球の中でスカラベがサナギになって誕生(再生)するところから、そのサナギに似せてミイラを作ったと・・・・・?
 
 ただ、生態系は何でもかんでも原始のままがいいわけではなく、奈良公園のシカは明らかに数が多過ぎ、慢性的な栄養失調と近親交配の弊害も出ているようだし、周囲に毒素を撒くナギの木の急増も山の様相を一変させる勢いらしい。
 樹相の変化が草を減らし、多様な昆虫を減らし、野鳥を減らしている側面もあるということで、本質に迫る知恵を出し合うことは非常に困難なことだという苦渋が伝わってきた。
 昆虫一匹よう触らないような人に限って、「シカの頭数削減などとんでもない」と言い、いわゆる世論はそれを肯定するようだ。

 とはいえ、鉄道の駅から20分ほど歩いて世界遺産の原始林に入れるのは世界広しと言えどもここだけで、こういう貴重な自然を「思い付きの観光策」のために手を入れては、取り返しのつかないことになる。
 先生は、エコロジーの大切さが実感できない若者が増えていると嘆き、子や孫の小さい時にどうか自然の中で遊ばせてほしいと強調されていた。(受講者の多くは対象が孫以下だったが)
 そして、シカが栄養不足だからと言ってキャベツ等の野菜くずをやるのは止めてほしいとのことで、それはシカが野菜の味と匂いを覚えて民家の畑を荒らす元になっているからだということだった。

 補足  奈良県知事が、奈良公園でイベントをしてシバが剥げたら高麗芝で補修すると言ったときに大反対した話も楽しかった。ここのシバは、奈良公園と九重連山にしか残っていない貴重な「日本シバ」という「ノシバ」らしい。

2 件のコメント:

  1. 最近若草山が注目されていますね、貴重な自然を守るため多くの人々が知恵を出しあい全ての生物にとって一番よい方法を皆で知恵を出しあい、見つかるといいですね鹿の近親交配は深刻な問題ですね!奈良公園に鹿がいない等考えられないことですもんね!皆で知恵を出しあい良い方法が見つかるといいですね!

    追伸、戴いた漬物おいしく頂戴しました気遣い感謝です。

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  2.  此の頃「知恵を出し合う」ということが難しい世の中になっています。
     「増えすぎた鹿をどうするか」も、誰も自分の手を汚さず「何とかすべきだ」と言っているだけのように見えます。
     奈良公園の鹿は大台ケ原の鹿に比べ脚が短く運動能力が劣っているそうです。そして、大台ケ原では1年経ったら子を産むそうですが奈良公園では3年以降らしいです。
     自然との付き合い方というのも難しいものです。

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