2016年10月25日火曜日

国益よりも私益のTPP

 衆院TPP特別委員会で強行採決含みの緊迫した状況が続いている。
   交渉当事者が誰も国会に出ず、写真のとおり資料は真っ黒だ。
 これが近代国家のすることだろうか。
 そのことを問題にしないマスコミのジャーナリズムとしての姿勢も姿勢だ。

 大事なことを報道しないだけでなく、マスコミ論調は「グローバル社会に踏み出そうというのに時代遅れの農民・農協が既得権益を守ろうと駄々をこねている」という歪んだメッセージを撒いている。

 TPPには多くの問題があるが中でも私が危惧するのは9月24日に書いたISDS条項だ。
 http://yamashirokihachi.blogspot.jp/2016/09/blog-post_24.html
 締約国の企業や投資家が相手国を訴える仕組みだ。

 エクアドルでは、裁判所が大規模環境汚染を起こした米国企業に損害賠償を命じたが、ISDS条項が発動され判決の執行停止が命じられた。
 米国、カナダ、メキシコが締結したAFTAでは、提訴の75%が米国企業によるもので、全事案の中で米国企業が敗れた事案は皆無である。
 これを、「国益の上に多国籍企業の私益を置くものだ」「国の主権を売り渡すものだ」と指摘してどこがおかしいだろうか。

 食の安全のために対策を強化したり、医薬品の基準を慎重にしたり、皆保険を守るために施策を充実したりすると、「自由経済に反する保護主義だ」といって多額の損害賠償を払わなければならなくなる。
 ドイツ政府は脱原発政策で約6000億円の賠償を訴えられている。敗れるだろうといわれている。
 日本の外務省は賠償を前提としてそれらのための「国際経済紛争処理室」を既に設置した。

 TPPは農業だけの問題ではない。
 国民の健康・安全その他生活すべてを多国籍企業に売り渡す協定書だ。
 保守だの革新だのという立場を超えて、こんな売国的な協定を批准させてはならない。

    嘘つかぬとのポスターありて秋寂し

1 件のコメント:

  1.  EU・カナダ自由貿易協定(FTA)は、ベルギーの地域議会が批准を拒否し調印が延期された。
     同議会の反対理由はISDS条項で「多国籍企業がISDS条項を行使して国家を攻撃し、社会・環境基準や公共サービスの保護を見直すことは認められない」としている。
     EU各国でも、「企業の意向で各種の安全・環境基準が緩和される恐れや農業衰退の懸念ある」と大規模な抗議行動が相次いでいる。
     しかし、日本のマスコミはほとんど報じない。これでいいのだろうか。

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