2016年10月23日日曜日

金木犀の復権

   金木犀はまるで忍者のようだ。
 日頃は全く目立たない雑木のように隠れていたのに、いざというと全身が橙色に輝き、街中を芳香に包んでいる。
 ここにも、あそこにも金木犀があったんや!と大袈裟でなく驚いている。
 ほんとうに嘘のようにあちこちから湧いて出てきた感じだ。

   さて私などは、秋になって金木犀が咲くと「どこからかトイレの臭いがする」と感じたものだ。
 嗅覚というのは一番本能に近いようで、理屈では解っていても、それよりも早く脳内の回線が「トイレの芳香剤」と結びつけていた。

 ところが、この回線が、一定の年齢以下の人々にはそのようには繋がらないのだと妻から指摘された。
 その理由は、もう、昨日今日のことではないのだが、トイレ等の芳香剤が多様になり、あるいはもう少し薄い芳香剤が普及し、「トイレの芳香剤=金木犀の香り」という方程式が崩れて久しいのだという。

 反対に言うと、金木犀の臭いを嗅いでトイレの臭いだと感じる人は、結構な年齢以上の人、つまり早い話が『あんたは年寄りだ』というのだ。
 とすると、あまりカッコイイものではないから、嗅覚に関する本能的記憶からトイレの芳香剤を意識的に抹消して、純粋に金木犀の香りというプラスの情報をインプットする必要がある。

 我が家周辺では、去年より大分遅れて今が満開のような気がする。
 今日は出かける時に、少しばかり手折って紙袋の中に落としこんた。
 ちょっとした匂い袋のようなものだと自分では気に入ったが、すれ違う高齢者には「トイレの臭いの人」と思われているかもしれない。

 金木犀にとっては人間が作ったトイレの芳香剤は大きな迷惑だったに違いない。
 が、ようやく純粋に芳香として復権がなりつつある。
 そもそもは芳香だから、中国には3年間金木犀を漬け込んだ「桂花陳酒」というお酒がある。
 楊貴妃が好んだとも言われている。
 桂花陳酒を飲んで、「金木犀はトイレの臭い」という感覚を消去しようと思っている。

     木犀や桂花陳酒を思うべし

6 件のコメント:

  1.  24日、窓の外からジョウビタキの声が聞こえた。冬鳥である。

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  2. 先週から一週間山小屋に行って来ました。今日明け方鹿の鳴き声が聞こえました。

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  3.  奈良公園や大台ケ原では鹿も珍しくありませんが、そうでない山里で鹿の声を聞くのはきっといいものなのでしょうねえ。
     話はズレますが、奈良公園の鹿も基本は野生でペットではありません。秋の繁殖期には人間の子供が突かれたりします。

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  4.  我が家の近所の金木犀は、堂々とした樹木で大木とまではいきませんが、歩道脇に5~6本並んだ金木犀のアーチの下を歩くと、確かにトイレの芳香剤の匂いがします。もっと金木犀に鼻を近づけるとあまり高価ではない芳香剤の匂いがします。長谷やんの言われているとおり、「金木犀はトイレの臭い」という感覚を消去しよう。とは思いますが、一度覚えた臭覚の消去は、中々困難ではないかと思います。 バラやん

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  5.  Win10のバージョンアップ等に関連して多くのパソコンがトラブっているようですね。
     コメントが上手くできないときにはバラやんのようにコメント本文に記入者を入れて「匿名」欄で「公開」していただくのも一方法です。ありがとうございます。
     バラやんの感覚は同世代の同じ悩みです。あははは。

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  6.  バラやん、パソコン修理店で思わぬウイルスが入ってないかどうか調べてもらうのも対策です。

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