2012年6月30日土曜日

燕が珍しくなる日

  燕は「田の神様を負うてくる(広島)」「大神宮様のお使い(新潟)」などと、昔から瑞穂の国の人々に親しまれ愛されてきた。その理由は説明されなくても理解できる。
  その割には、古代の土器や銅鐸などの絵画を思い浮かべると、鳥という意味では白鳥のような水鳥はあちこちに登場するし、害虫を獲るという意味ではトンボの絵も有名だが、燕の絵や古歌は浅学にして知らない。
  古代ではないが、「仏教盛んな中世の人たちから見ると、虫を食べて殺生し、土で巣を作り子煩悩で、寒くなれば餌を求めて南へ渡る燕はあまりに現実的で下品(げぼん) に見えた」との松浦敬親氏の文に接した折には「そんな見方もあるのか」と少々驚いたり半分感心したりした。
  しかし、近年その数は40年前の半分にまで減ったと言われている。
  その理由のあれこれも容易に想像がつく。
  その上に、東日本大震災による水田の放棄、放射性物質の被曝が追い討ちをかけていると、日本野鳥の会などは心配を深めている。
  そういえば、確かに、飛んでいる姿はよく見るが、燕の巣をあまり眼にすることは少なくなった。
  写真は、義母の入所している施設の巣。半人前のことを「くちばしの黄色い者」というのもよく判る。
  親燕が1時間に520回も餌を運んだという観察記録もあるそうだが、確かに一夫一婦の親燕が頻繁に帰ってくる。
  近所には、減農薬なのだろう、カブトエビの大発生している田圃もある。カルガモが居ついている田圃もある。善哉、善哉。

  親燕の飛んで帰ってくるスピードと回数、その度の子燕の大合唱は、躍動感や生命感に溢れている。その意味で老人施設の燕の巣はありがたい。

  とまれ、重ねて言うが燕は激減しているらしい。
  国際金融マフィアや多国籍企業がこの列島を破壊しつくさないうちに、燕が飛びかう国を再建していきたい。
  燕を半減させた犯人は、効率的な経済一辺倒で走り続けてきた私たちかもしれないから。

  下の写真はチェルノブイリ汚染地域で見つかったもの。体の一部が白くなったもの、くちばしの異常。尾羽の異常。何れも日本野鳥の会のHPの写真。
  孫や曾孫が泣いてからではもう遅い。
  


4 件のコメント:

  1. 雀と同様、最近にわかにその減少傾向を指摘されている燕、確かに、飛んでいる姿はこの辺でも見ますが巣は見かけなくなったのでしょうか?
    子供の頃、折り紙飛行機で「ツバメ」型というのがあり、折り方と、尻尾のようにちぎって形を作るのが難しく、憧れの的でした。

    返信削除
  2. !夕べ義母に聞いたところ、戦前の農家でも全ての家に巣を作ったわけではなく、だから、巣を作ったら縁起がよいと言っていたそうです。義母の家でも「糞がかなん(かなわん)」と言いながらも下に新聞紙を敷いて巣立ちを送り出したそうです。
     さて、純粋に自然保護・生物多様性等を論じる講演等を聞くと対応は非常に複雑で困難です。自然のサイクルの中に害虫も益虫もありません。例えば蚊は多くの益虫・益鳥を支えています。しかし人間は、蚊は絶滅させようとし、益虫・益鳥は保護だ、大変だと言うのです。日本人は、もっと自然に対して謙虚に成らなければ成りません。と言いながら私は蚊遣りを見つめています。

    返信削除
  3. 大阪市内ではほとんど見かけないです。コンクリートばかりですからね。5月に堺の初芝あたりを歩いた時は、さすがに土塀の家も多く、渡ってきたばかりの燕が飛び回っていました。

    返信削除
  4. !mykazekさん コメントありがとう。
    1、軒のない建物、高度の汚れ防止塗料も問題ですが、水田等の泥や土のなくなったのが決定的ではないでしょうか。特に大阪市は東京都区内と比べても土(公園等)が少ないですからね。
    2、写真の巣を今夕観察していると、20分以上親燕が帰ってきませんでした。何か事件が起こっていなければよいが・・・と心配です。

    返信削除