2012年6月28日木曜日

夏越の祓

  明後日は半年間の罪や穢れを祓う大祓の日で、茅の輪をくぐるとこの半年間におかした罪や穢れが祓われ清められるとされているが、いらちの私は既に25日に北野天満宮で茅の輪をくぐってきた。
  さて、 その大祓の際に古くは天皇自身が、飛鳥~奈良時代には中臣氏が読んだ大祓詞(おおはらへのことば)が延喜式に記録されているが、現在の春日大社(中臣~藤原氏の氏寺)等一般的な神社では「天つ罪(あまつつみ) 國つ罪(くにつつみ) ここだくの罪(その他多くの罪)・・・」と跳ばして読むが、延喜式にはそれぞれ具体例が挙げられている。
  それによると、天つ罪としては、畦放ち(あはなち)(田のあぜを壊す)、溝埋め(みぞうめ)(田の溝を埋める)、樋放ち(ひはなち)(潅漑の樋を壊す)、頻蒔き(しきまき)(他人の田畑に重ねて蒔いて成長を妨げる)、串刺し(くしさし)(家畜に串を刺して殺す又は耕地に串を刺す)、生剥ぎ(いきはぎ)(家畜の皮を生きたまま剥ぐ)、逆剥ぎ(さかはぎ)(家畜の皮を尾の方から剥ぐ又は皮を剥ぐ順序を逆に行なう)、屎戸(くそと)(肥料の屎に呪いをかける)、ここだくの罪が、
  國つ罪としては、生膚断ち(いきはだだち)(生きている人の膚を傷つける)、死膚断ち(しにはだだち)(死んだ者の膚を傷つける又は膚を傷つけて殺す)、白人(しろひと)(白あざや白なまず)、胡久美(こくみ)(いぼやこぶ)、己が母犯す罪(自分の母親と通ずる・以下同様)、己が子犯す罪、母と子と犯す罪、子と母と犯す罪、畜(けもの)犯す罪、昆虫の災い(はうむしのわざわい)(虫などの災禍)、高つ神の災い(雷の災禍)、高つ鳥の災い(鳥の災禍)、畜仆し蠱物する罪(けものたおしまじものするつみ)(家畜を殺してその血で呪う呪術)、ここだくの罪が、指摘されている。
  私は、このような具体例を取り上げて、よって大祓や神道が陳腐だ等と言いたいのではない。
  そうではなく、大祓詞をきわめて重要な歴史的史料としてながめると(ほんとうにものすごい歴史的史料だと思うのだが)、古代の人々のリアルな人間の有様と、当時の国のリーダーたちが、大陸や半島の国家から馬鹿にされないようにと、必死になって文化革命を推進していたということがヒシヒシと伝わってきて愛おしくなってくる。(大祓はそもそも宮中行事であった)
  翻って、この国は今もそんな古代とあんまり変わっていないなあと思うのが可笑しくて悲しい。
  いや、今のリーダーの層の人々には、今風の天つ罪、國つ罪を列挙しても屁とも思っていないところが度し難い。
  国敗れて山河ありとの言葉があるが、原発事故では帰るべき山河すら残らない。低レベル放射性廃棄物で300年間管理が必要、高レベル放射性廃棄物は100万年必要というものを私腹のために再稼動させるのだ。
  故に仏教界からもキリスト教界からも脱原発の声は上がっている。だからと言うわけではないが、この国の山川草木をこよなく愛する八百万の神々をお守りする人々からもっと脱原発社会という具体的な声が上がっても善いのではないかと私は思う。(鎮魂や救援の諸事業は承知しているが)
  いやそれよりも、原発の罪は大祓などできぬ、祓ってはならぬことを宣言すべきだろう。
  六月(みなづき)の晦(つごもり)の大祓(おおはらへ)に臨んでそんな夢を見た。

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