2015年7月16日木曜日

北向きって?

  毎日新聞奈良版に寮美千子さんの「ならまち暮らし」というシリーズがあり、その7月8日付けのものが「やさしい呪文」というものだった。
 それは、奈良町の古老の言い伝えのようなものだったが、その中のひとつに『服をかけるときは服の前を北に向けてはあかんで』というものがあった。
 堅い言葉で言えば『禁忌』になるが、元々私にはなかった言い伝えであった。
 ただ、私が洗濯物を西向きに干したところ妻が「東向きに干して!」ということがあってから、従順な私はそのようにすることにしてきた。妻の言うのには「本来は南向きに干すのだが地形の都合で無理ならせめて東向きに!」ということだった。
 しかし、この禁忌、いったい何処から生まれてきたのだろう。
 以前に、新日本風土記かなんかで、死者の着物が送られてくるお寺があり、そこではその着物がずらーっと掛けられていたように放映されていた。そのように記憶している。ネットで検索してみると、死者の使っていた寝間着等の着物を数日(1日から49日ぐらい)北向きに干しておく習慣が一部の地域には残っているらしい。
 そういう葬送の形式と類似したことを嫌う気持ちは理解できるが、それなら何故それが北向きなのだろう。
 北枕はお釈迦様の涅槃の状況によるとの説もあるが、それを連想させるからというほど単純ではなかろうに。
 白川静氏の漢字学によると、「北」は、左右に横向きの人が背中合わせになっている形で「せなか」「そむく」の意味になる。南面した王の背中が北になるという。
 その上に「北風」「冬」「生命力の減退」を古人が連想し、マイナスイメージを持ったであろうことも想像できるが、考えようによっては南面した王は北にいたのだし、事実、妙見その他北にいる神仏もある。
 もっと単純に、大陸の中原に都した王朝にとって一番の脅威は北方の異民族(北荻)であったというトラウマが北に負のイメージを負荷したのだろうか。
 などなどと考えてみたが真相は判らない。「南向きに干して太陽の恩恵を受けようとしただけや」というあたりが案外正解かもしれない。
 ちなみに、洗濯物は夜干してはダメ!という禁忌もあるし、近頃では「夜に洗濯物が取り入れられていない高齢者の家は注意してあげましょう」という親切な話もある。
 こちらの方は、元々共稼ぎであった我が家では四の五の言っておられないので、今でも夜から干している。

3 件のコメント:

  1.  「北向き」とは少しずれるが、台風が高知県に上陸して岡山県を北上中である。テレビが「日本列島を縦断中」というので私が「横断やろ」というと妻は「縦断が正しい」という。一般的には南北方向を「縦断」というが日本列島の場合は日本列島に沿って(北海道・青森から九州・沖縄)縦断といい、そうでないのを横断というらしいから、どちらも間違いではないらしいが難しい。この台風、横断したの?縦断したの?皆さんの感覚はどちら?

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  2. 石鯛という魚は魚体の背から腹側に縞模様があり、縦縞のように思いますが横縞だそうで、口から尻尾が縦だから、という事です。地軸に対して考えれば縦断でしょうな。

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  3.  石鯛に即して言えば横縞=横断ということではないでしょうか。
     ちなみに、朝日新聞夕刊の見出しは『中四国を縦断』でした。日本列島ではなく中四国なら縦断に肯けます。ひげ親父さんの言うように「地軸原理主義」で割り切るのも一つかもしれませんね。

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