2015年2月14日土曜日

青い鳥探し

手向山八幡宮神楽所
  奈良県知事が若草山にバスを走らせようとしている。
 そのバス道路のためには常識的に考えて相当な自然破壊を伴うし、文化遺産を傷つける。
 若草山は奈良の重要な借景であり、その意義が分からないのは(精神が)大いなる田舎者だと私は思っている。
 こういう知事を担いでいる者も同罪だろう。事実、2月のウイークデーに奈良公園を歩いてみると、戸を閉めている土産物屋や茶店が多い。計算上その方が得策だと考えているのだろう。
 一言で言って情けない感情におそわれる。
 流行り言葉のような自己責任などという気はないが、観光業者自身が考え直すことも必要ではないか。

 県別の国宝建造物の一覧表がある。
 国宝建造物が0件という県が16県、1件という県が11県、東京都でさえ2件という状況の中で奈良県の国宝建造物は64件でもちろんトップである。
 他県の人々にとって、動かせる国宝は展覧会等で見る機会もゼロではないが、建造物は奈良に行かなければ見ることはできない。
その観光上のアピールも上手でない。
 例えば、奈良公園の入口近く、興福寺南円堂の西奥に国宝の三重塔がある。
 興福寺の五重塔の前はいつも観光客でにぎわっているが、三重塔はいつも閑散としている。
 国宝建造物0件の16県の観光課の人は歯ぎしりしていることだろう。
 驕れるもの久しからず、ただ春の夜の夢の如し。

  もちろん国宝ではないが、東大寺南大門南西の「夢広場」に「TenTenCafe」があり、大阪法善寺横丁の火災痕から採取してきた河島英五の落描き?の壁がある。
 大仏も阿修羅像もよいが、私はこの落描きが気に入っている。
 落描きといえば、手向山八幡宮の神楽所には鎌倉時代と思われる源頼光鬼退治の落描き?(壁画)がある。
 ここも多くの観光客が振り向きもせずにその前を通り抜けている。
 いつも開け放されているが見向く人は100人に1人もない。
 菅原道真が腰かけた石に座ってこの絵を鑑賞するのもオツなものである。
 このたびは幣もとりあへず手向山紅葉のにしき神のまにまにの碑さえ無視されている。
 まあいい。私はこういうあっけらかんとした奈良が好きである。
 だから、知事に代わって隠れた観光ポイントをアピールしておきたい。

 さて、幾ら観光に役立つからといってやっていいことと悪いことがある。
 知事が後押しして国交省が、平城宮大極殿院を東西約177m、南北約318mの回廊を付けて復元する。
 平城宮蹟は「地下の正倉院」と呼ばれるほど木簡が水に漬かった状態で眠っているが、この復元工事で水位が低下し木簡類は朽ち果てることだろう。
 今でも奈良の人間は、南都焼き討ちをした平重衡が好きでないように(平家物語などでは文武に優れた公達とされているが)、後年奈良を訪れる知識人は、こんな暴挙に黙っていた平成の人間を嘲笑することだろう。

4 件のコメント:

  1. 興福寺に三重の塔があることは知りませんでした。どうしても五重塔の前を素通りして国宝館の阿修羅に逢いに行ってしまいますね。私にとって三重の塔といえば斑鳩の「法起寺」の三重塔が一番です。高校生の頃に知り、通い続けてました。当時は観光客も少なく、のんびりした風景が好きでした。

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  2.  法起寺の近所に妻の方の親戚の家があります。その家から美しい三重塔が見えます。おっしゃる通り通う値打ちのある風景だと思います。
     片や興福寺の三重塔は、三条通・猿沢の池からは上手く見えません。元々は見えたはずだと思うのですが、今は奥まった窪地に建っている感じです。すぐ後ろに興福寺会館まであります。
     こういう商売っ気のないところが奈良らしいところです。

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  3. 1月末の日曜日、ワイフと法隆寺、そして始めての法輪寺、法起寺を歩きました。風もなく冬晴れの斑鳩を満喫しました。しかし法隆寺の拝観料がエッ・・一人1,500円!二人で3,000円!!・・・受付の小母さんの視線を感じながらUターン。外から見るだけにしました。その分伽羅と沈香の線香(もちろん人工香料でしょうが)を買ってしまいました。法輪寺の隣の宮大工の作業場の「鵤工舎」も覗き見しました。

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  4.  たしかに1500円は躊躇しますね。
     その点、奈良公園は無料ですから、私のフィールドワークはもっぱら無料エリアです。
     そのためでしょう、氷室神社には「お賽銭は100円以上でお願いします」とありました。ああ。

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