2012年9月15日土曜日

鹿政談は微笑ましいが

  奈良の鹿を殺すと死罪であった頃、正直者の豆腐屋の六兵衛さんが野良犬と間違って殺してしまう。
  検事役の鹿の守役・塚原出雲(が犬と異なる鹿の特徴を説明)に対してお奉行が・・・・・、
  「だまれ!奈良の奉行を務むる身が、鹿の落し角を心得おらぬと思いおるか。鹿には上より年に三千石の餌料をば下しおかれある。しかるを、ちかごろ、その餌料のうちを金子に替え、奈良の町人、百姓どもに高利をもって貸しつけ、役人の権柄にて厳しく取り立つるゆえ、難儀いたしおる者あまたあること、奉行の耳にも入りおる。二百頭余りの鹿に、三千石の餌料ならば、鹿の腹は満ち満ちておらねば相ならぬ。しかるを、ろくに餌を与えざるまま、鹿はひもじさに耐えかね、町中をうろつき回り、豆腐屋においてキラズなんどを盗み食うに相違あるまい。いかに神鹿たればとて、盗みをするにおいては、これ賊類にして神慮にかなわず、打ち殺しても苦しゅうないと心得る。その方、たってこれを鹿と言い張るならば、犬か鹿かはさておき、餌料横領の儀より吟味いたそうか、どうじゃ」
・・・・「これは犬に相違ございません」
・・・・と、お奉行が「待て、六兵衛、待て。その方は豆腐屋じゃな。キラズ(切らず)にやるぞ」
「マメ(豆)で帰ります」
------は、米朝お得意の『鹿政談』。(注:キラズ=おから)

  その鹿、平成24年7月現在1,079頭で、1年間の交通事故死亡者?数は91頭だったらしい。
  だから奈良公園周辺には「鹿の飛び出し注意」の交通標識がいっぱいある。
  私は、鳥や虫を探しに奈良公園を歩くことが少なくないが、奈良公園ビギナーの方に是非ともお伝えしたいことがある。「鹿の飛び出し」ではなく「鹿に注意」のことである。
  それは・・・、見た目はペットのように可愛いけれど、奈良公園の鹿はやっぱり野生だということ。
  9月から11月は発情期で、人間界の不可解な事件同様、妖しい牡鹿が徘徊している。ほんとうである。
  そして、気のいい(人間の)母親が目を離したすきを狙って小さな(人間の)子供をドーンと突き飛ばす。もちろん怪我をする。(自然に親しむことなく成長した大人は皆なペットと思い違いをしているので、幼児から目を離す)
  場合によっては、大人であっても前脚を高く掲げて殴ってくる。
  中には牛や馬のような感じの牡鹿もいるから文字どおり馬鹿にはできない。
  このブログで奈良の鹿を怖がってもらっては困るのだが、ほんとうにこの時期の牡鹿には気をつけてもらいたい。
  ただし、ほとんどの鹿は優しいものなので誤解なく。
  世の中が訴訟社会になって、やたらに管理者の責任逃れのためのような「禁止」や「注意」の看板が街中に乱立したせいだろうか、「発情期の牡鹿に注意」の看板を誰も見ていないようだが、私は何度も「キレた牡鹿の蛮行」を目撃している。
  恋に狂った男は度し難い。
  それが解っている人は被害に遇わない。

2 件のコメント:

  1. 同じ鹿政談のマクラに奈良名物を「大仏に鹿の巻筆あられ酒、春日灯篭町の早起き」とありますが長谷やんさんも早起きですね。

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  2. !奈良の鹿の学習能力には驚きますね。店の「鹿せんべい」には一切手を出さないのにお客が買った途端集まってきてお辞儀をします。さらには手から半ば奪いとるように襲ってきます。子供や若いギャルがキャーキャー言って逃げまどいます。
     ただし、これは基本的には怪我をしないので、私は一切アドバイスはせず笑って通り過ぎることにしています。(こういうときに鹿を制する方法があるのですがそれは公表いたしません。アッハッハ)

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