2025年4月7日月曜日

めぐり逢い

    直木孝次郎著『万葉集と古代史』という本を持っているが、いつ購入したのかは全く記憶にない。記憶の断片を拾い集めると上野誠先生の万葉集に関わる講義(奈良大学公開授業)を聞いていた頃だろうが、それは随分昔になる。当時とりあえず読んでは見たが私の興味とマッチせず、記憶に残らなかったのだろう。
 その後ヒョンナめぐりあわせから古墳に興味が湧き、小笠原好彦先生の古代史の講座を学ぶようになったが、こちらも古墳時代が過ぎて藤原京、平城京と時代が移ってくると徐々に興味が低下していき、いろんな人名が輻輳して平板な理解で推移してきた。
 そんな中、モノは試しと書架から引っ張り出して再び読み始めると、嘘のように大枠ながら理解が進み、というか、読んでいて面白くなってきた。嘘のような話だ。
 日本書紀・続日本紀では淡々と描かれている政争が、渦中の人物の歌によって生き生きと、そして本音が垣間見えることでホンモノの歴史に出会えたような気になってきて興奮した。
 常々妻は私に「読み終えた本は捨てなさい」と迫るのだが、本はこのように生き返ったりするのだから捨てられない。
 乱視と左右の視力の大きな差によって読書が苦痛になりつつあるが、本がある限り老いても退屈を感じることがない。
 なお今回の本が面白かったのは著者直木孝次郎先生の学識によるところが大きい。2019年2月に亡くなられたが、晩年は施設に入居されながら『朝日歌壇』に登場されていた。それを読んで知っていたというだけだが少しだけ身近な大先生だった。

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