4月は年度替わりの月のため、私の加わっている介護施設家族会も総会を行い、その夜に新旧役員の懇親会をちょっとした料亭で行った。
この、年に1回の懇親会を以前は居酒屋でしていたが、ここ数年は少し顔の広い役員の‟腕力”で料亭になっている。
そんなもので、料理長が料理の全国技能コンクール優勝者という紹介があり、その日の献立の説明もあった。
いろいろな薀蓄もあったが、イチボの炭火焼は「ご堪能ください」ということだった。
イチボという部位はネットでは牛の腰のランプの一部というのが多いが、料理長はモモの一部と言っていた。
いずれにしても貴重な霜降り肉である。
ところで、焼肉は今でこそブームであるが、私が食べ始めた昭和30年代の暖簾はホルモン一色だった。
背伸びした高校生だった。
注文するのは、ツラミ、ハラミ、ハート、マメと言ったもので、はりこんでバラで、ロースなどは邪道だった。いや、ロースなんかなかったような気がする。
ところがこの頃は、ロースやカルビはごく普通で、ミスジとかイチボという霜降り肉も珍しくなくなった。隔世の感がある。
そして私はというと、ノスタルジアではないけれど、炭火焼でイチボが出されるとちょっとした心のすれ違いを感じずにはおれないのだ。
もっと端的に言えば、刺身で食べるならともかく、こんな柔らかい焼肉は牛肉ではない!と思ってしまう。
霜降り肉の焼肉なんか美味しくない! というのが本音である。
ほんとうに皆さん、口の中でとろける霜降り肉の焼肉って美味しいですか?
私(の舌)が世間に取り残されただけだろうか。
イチボと一緒に違和感が胃の中に落ちていった。
テレビの中では若い芸人やアナウンサーが、二言目には「甘~い」「やわらかい」と叫んでいる。
この国は、‟贅沢で実は貧しい国”ではないだろうかと私は首を捻っている。
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