サトー・ハチローは昭和10年に『もずが枯木で』の詩を出したが、その詩の最後は「もずよ寒くも泣くでねえ / 兄さはもっと寒いだぞ」で結ばれていた。
ところで、百舌鳥は小なりと言えども堂々たる猛禽類である。高鳴きは我が縄張りへの進入は断じて許さないぞという威嚇であって、間違っても寒いからと泣いている訳でもない。そんなことはサトー・ハチローも国民もみんな知っていた。でも、ただ百舌鳥は髙鳴きしているだけで「満州に行った兄さ」の「鉄砲が涙で光っただ」で詩が終わるのは許されない時代であった。叱られた百舌鳥は冤罪である。
近頃は冗談でなく愛国心だとか非国民、それの裏返しの外国人非難、はてはスパイ防止法というおどろおどろしい言葉が飛び交うようになった。その先っちょに総理大臣がいる。
次に叱られて泣くのは庶民とならないかと心配する。
もずが枯木で泣いている
おいらはわらをたたいている
綿びき車はおばあさん
コットン水車もまわってる
みんな去年と同じだよ
けれども足りねえものがある
兄さの薪割る音がねえ
バッサリ薪割る音がねえ
兄さは満州へ行っただよ
鉄砲が涙に光っただ
もずよ寒くも泣くでねえ
兄さはもっと寒いだぞ
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