2023年2月4日土曜日

焼嗅がし(やいかがし)

   以前に古書店で手に入れた『27 日本の民俗 大阪』(高谷重夫著 第一法規出版)は、全国47都道府県別のシリーズの内の一つで、昭和47年発行の貴重な本である。
 それでも、大阪府下30地点の調査結果であるから、拾い上げられなかった民俗は多く、そもそも大阪市内は1件もない。
 
 わが家は戦前の船場から出ているが、そんなもので、戦前の大阪市内辺りのことが解らないのだが、府下の民俗から類推できることもある。
 例えば豆まきだが、守口市の項に「福は内、鬼は外、乾の隅へドッサリコ」と豆をまいたというのが採録されていたが、わが家はまさにそのとおり言い伝えられている。

 さて、節分にはイワシを焼いて食べ、そのイワシの頭をヒイラギに刺して戸口に飾る。焼嗅がし(やいかがし)といい、鬼(聞鼻〈かぐはな〉といった鬼)の嫌いなイワシの臭いと棘に刺さると「ひいらぐ(疼く)」ヒイラギ(柊)で疫病を追放する呪法(まじない)である。
 大阪府下ではこれを、ヤグサシといったり、メツコハナツコ(目突こう鼻突こう)といったり、オゴロ(鬼)モチナイといったりしたらしい。農村ではこれがモグラ除けとされていたという。

 相という字のことで書いたが、人は盛んな木を見てパワーを助けてもらった。同じ発想で、冬季に青々と盛んなヒイラギと、これも冬に元気なイワシのパワーで疫鬼を追い払おうと考えたのではないだろうか。
 大声で「福は内、鬼は外、乾の隅にドッサリコ」と豆を撒いたら、ほんとうに家中から邪鬼が払われたような爽快な気分になった。
 ・・・これ、皆さん、笑います?


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