11月1日に予定されている大阪市の住民投票は、『大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票』だが、これがどれほど時代遅れで世間知らずのテーマであるかはあまり知られていない。
よって、フェイスブックで見つけた小川裕夫氏のレポートを基に以下にご紹介したい。 東京23区で構成される特別区協議会は「特別区の廃止」を表明している。
23区の一部には特別区廃止にそれほど積極的ではない区もあるが、特別区協議会は東京23区すべてが加盟している。つまり、「特別区の廃止」は東京23区の総意と見なすことができる。
その理由は、例えば千代田区は、15年以上前から千代田市になりたいと宣言している。
東京23区は、本来なら自分たちの税収になる固定資産税・市町村民税法人分・特別土地取得税の3税を東京都に収めている。千代田区の場合、3税で約3300億円の税収を1年間で得ているが、これが一旦はすべて都に収奪されている。ある千代田区職員は言う。「千代田区が『市になりたい!』と宣言した約15年前、3税の合計は約2500億円前後でした。千代田区に企業が集中したこともあり、都に取られる3税の税収はさらに増えました。千代田区も『3300億円全額を千代田区の財源にしろ』と主張したいわけではありません。千代田区にはオフィスがたくさんあり、昼間人口は100万人近くまで増えます。そのオフィスで働く人や学生、買い物に来る人などのためにも案内板の設置、緑化や街の清掃、フリーwi-fiの整備、歩道や公園の整備、図書館をはじめとした公共施設の充実などをしなければならないのです」。
千代田区の人口は約5万5000人。平たく言えば、約6万人で100万人を支えることになる。ゆえに千代田区はそれらの人たちのために、インフラ整備に取り組まなければならない。
金持ち自治体の千代田区だから、こうしたワガママを言っているわけではない。世田谷区も同様に、特別区から脱却を模索している。世田谷区職員は言う。「世田谷区の人口は90万人を突破していますが、まだ増える傾向にあります。90万人といえば、政令指定都市に匹敵する人口です。人口規模だけを見れば、世田谷区が半人前の区のままなのはおかしい。住民サービスを充実させるためにも市になるという選択は、当然ながら検討されるべきです」
特別区が奪われるのは財源ばかりではない。本来なら市が有する権限も奪われる。その一例が、都市計画における用途地域だ。東京23区には、用途地域と呼ばれる都市計画の権限がない。そのため、「地域の実情に合わせた都市開発が進められない」とこぼすのは杉並区の職員。従来、街には人が住む住宅地域、商店が営業しオフィスが立地する商業地域、工場などが操業する工業地域、食糧生産や酪農のできる農業地域といったように、人が住みやすいように地域の役割を明確化して、それに応じた計画が立てられている。
極端な例を出せば、閑静な住宅街にガスコンビナートが立地していたら、住民は常に事故の危険性に怯えなければならない。小中学校の隣にラブホテルや風俗店が進出するのは教育上よろしくない。オフィス街に牧場を開設すれば、家畜の糞や肥料から発せられる臭気でビジネスに影響が出る。そうした混在を避けるのが、用途地域の目的にある。実態に合わせた用途地域が定められなければ、住民の生活は著しい混乱を生じる。
近年、建築基準法の規制緩和で閑静な住宅街にもコンビニ出店が可能になった。これにより、来店客による騒音・振動問題をはじめ、店舗から排出される臭気、排気口や電気設備の騒音が不安視されている。また、コンビニが出店することで往来する自動車が増加し、その自動車のライトや店舗看板の照明等による光害も地域住民は悩まされるだろう。
「特別区には、それらを変更する権限がありません。東京都は東京都全体を管轄する立場にあるので、仮に区が都に陳情してもすぐには動いてくれないでしょう。都市開発においても、区が機動的に動けなくなるわけです。だから、都になったからといってメリットがあるとはいえないのです」(前出・杉並区職員)
維新はトコーソーで大阪が成長するというが、維新のいう二重行政下の神奈川県は人口で大阪府を抜いている。府県内総生産は愛知県が大阪府を抜いた。昨今、地方自治体関係者の間で「もっとも伸びている都市」と衆目一致しているのが福岡と言われている。
橋下知事当選から約13年が経過した。この間に大阪ははっきり言って停滞している。そろそろトコーソーの詐欺商法から目を覚ますべき時ではないだろうか。