何気なくテレビをつけたら「ニッポン空き家列島の衝撃」という番組をやっていて、労働規制緩和、行政民営化などで辟易させられた規制改革会議や経済財政諮問会議の主要メンバーのひとり八代尚宏氏が映っていた。
「人口減少時代になった。20年後には3軒に1軒が空き家になる。地価は下落しライフラインは維持できなくなり犯罪や放火が頻発する。だから老人は都会の介護付有料老人マンションに移住し、(田舎の)実家に住み続けたいなどと我儘を言うな」というような議論が展開されていた。
若者たちには、「高齢者がいる限りコンパクトな居住街以外のライフラインは面倒見きれないから君たちも覚悟せよ」と言っていた。
人口減少時代を大義名分にして、福祉の切り下げ、高負担、公務員攻撃が地方自治の舞台でも本格化するようだ。
穏やかな隠居生活は逃げ水のように逃げていく。
このテレビ番組のネタ本は、日本創生会議(元総務大臣・元建設官僚増田寛也座長)の人口減少問題検討分科会報告(通称増田レポート)で、中央公論でキャンペーンが開始されたのち、新聞やテレビで「この県ではあと何年で何割の自治体が消滅する」と面白おかしくセンセーショナルに先行して報じられている。
これに対する分析・批判は山下祐介著「地方消滅の罠」(ちくま新書)などで、「そもそも現状分析が正しくない」とか「選択と集中は危険な考え方」だとかというように明らかにされ、「各地方で実践されている事業の展望」などが縷々語られていて非常に参考になる。
さて、「ショックドクトリン」という言葉があるが、単純なフレーズが膨大に繰り返されるとショックドクトリンと同じような効果が引き起こされるように思う。
大阪でいえば「大阪府と大阪市という自治体が二つあるのが無駄だ」という幼稚なフレーズであるが、それでも繰り返され、メディアが拡散すると「そういうものか」という意識が庶民に広がる。
「地方は消滅する」論も、これでもかと繰り返されると、「長生きして申し訳ない」とか「実家に住みたいというのは我儘だろう」とか「もう私たちは『選択』されない方の人間なんだ」と思わせることだろう。
だから心ある人々は、増田レポートの各種の誤認や歪曲を批判し、自治体の未来を語らなければならないように思う。
ポイントは、人間や生活や社会というものを単純な経済と効率という物差しだけで斬って捨てる危険である。
「地方消滅の罠」は新書で300頁と言う大部であるが、暇なときに一読しておく価値はある。
京都市も「エコ・コンパクト」を看板にして、新たな‟開発と切捨て”の「京都壊し」が進んでいる。
返信削除本当にこの「地方消滅論」を批判的に学んでおかなければ住民側は守勢に立たされる。