2019年1月5日土曜日

縄文人の幸福感

   夢枕獏・岡村道雄著、かくまつ つとむ構成『縄文探検隊の記録』(インターナショナル新書)は面白かった。
 奈良でモンベルの辰野会長らが反対されている高級ホテル建設問題の集会があった折り、獏さんが「いま縄文に凝っています」と言っていたので、新刊発売日に購入した。
 それ以前から私も縄文関係の本を読み漁り、大いに注目していたので面白かった。
 
 岡村道雄氏は奈良文化財研究所や文化庁勤務などを経て今は奥松島縄文村歴史資料館名誉館長をされている。

 さて、この本の中では少し脇道のような「縄文人の幸福感と死生観」という小さな章で私は少し肯いた。
 …縄文時代は飢えなかったともいえる。カロリーを保証したかに見える稲作ですが、中央集権が確立して以降は飢饉の記録が多い。…飢饉を招いたのは冷害だけではありません。時代にもよりますが、権力による厳しい収奪も原因です。
 …環境が悪化している現代の狩猟採集民でも、4時間働くだけで楽に暮らせるようです。4時間働けばよかった暮しが1万年も続いたのが縄文時代です。
 …ワークシェアで4時間働いた残りの時間を何に振り向けるか、人間の幸せはそこにあると思いますよ。
 …不幸が幸福と違うのは比べるからそう感じるのです。…神さまという概念はお互いを比べて優劣をつけないための抑制装置のようなものだと思うのです。
 …本質は感謝ですね、…よこしまな感情を封じ、感謝と尊敬を選択したことが1万年に及ぶユートピア社会を作ったのだと思います。

 いささかユートピアに過ぎるかもしれないが、昔は東京への出張というと2泊3日の旅行命令が出た。無理をして1泊2日で用をすませば1日は「特別休暇」のようなものだった。
 それが丸々肯定されるとは思わないが、そのうちに普通の東京出張は泊なしの1日になった。それはいい。
 言いたいことは、そのようにして日本社会の生産性は上がっただろうが、労働者の幸福度は3倍(3日から1日)になっただろうかということである。

 そんな自分史を思い出しながら、階級社会というものを胸に刻んだ。
 繰り返すが、それはこの本の脇道である。
 翡翠のこと、土偶のこと、漆のこと、アスファルトのこと、等々考古学的研究成果も豊富である。
 それらをブログにまとめるほど頭の中は整理されていない。

   縄文は草木国土悉皆成仏

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