2019年1月20日日曜日

常識の通じない人

 榎本博明著『過剰反応社会の悪夢』角川新書はおかしな本である。
 現代社会のいろんな場面で当然とされている諸現象を「おかしくないか」と問題提起している側面では新しいが、言っていることは「常識を再構築する」というような当たり前のことである。じっくり考えればおかしくない。

 その中では、過剰反応する非常識な人の例をいくつか挙げているが、『独りよがりの正義感を振りかざす人』の章では、「もう幼児もいなくなった夕暮れ時に児童公園にやってきてサッカーボールで遊び始めた小学生に怒鳴り声をあげて注意した近所のおじさん」をあげている。
 『他人に対して不寛容』の章では、「何かにつけて自分の視点を絶対化し自分と違う考え方や行動パターンを取る人を糾弾する。相手の視点に対する想像力が欠けている」人が増えているという。
 『防衛的構えから攻撃的反応に出る』の章では、「過剰すぎる反応を示す場合それは相手の言葉や態度の問題ではなく、本人自身の心の内面の問題であることが多い」と指摘している。
 さすが心理学者である。

 今日のテーマは、橋下徹元大阪市長が当時の市営地下鉄職員にヒゲを剃れと命じ剃らなかった職員を不当評価処分したことが司法によって否定され、現吉村市長がツイッターで判決に悪態をついて控訴すると息巻いていることである。

 タバコを吸った職員を処分しながら知事自身はタバコを吸うために公用車を運転させたように屁理屈を言うのが維新の人々の特徴だが、冷やかに吉村氏を見ていると、「俺は市長だ。職員は白いものでも黒だと絶対服従せい」「市長に逆らうのはけしからん」と言っているとしか考えられない。
   とまれ、榎本先生の指摘する「困った人」である。自己誇大感、知識や経験が足りない、認知的複雑性の欠如、そして、人を言い負かすことが快感という人物ではなかろうか。

 こういう権力を振りかざす人物は強いものには弱いというのが特性であるから、5月1日以降皇嗣となる秋篠宮に「その髭はふさわしくない」と批判するだろうか。できるはずがない。
 

2 件のコメント:

  1.  30歳過ぎからひげを生やし始めたが特に処分されることもなく、今考えると自由な良い職場だったな~と。それもやっぱり民主的な労働組合があったからこそと思います。

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  2.  吉村氏や松井氏橋下氏は「俺が上司なのだから言うことを聞け」ということで、労働契約以上の全人格的服従を求めている。それを正しいと信じている。
     しかしそれはリーダー、上司としても失格だ。そんなことで組織が動くと考える方が無知に近い。管理者としては一番怠け者の発想だ。
     「人はパンのみに生来るにあらず」人はやりがい働き甲斐でモチベーションが上がるのである。
     つまり、彼らは人の上に立つ器ではないということだ。
     

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