2018年4月10日火曜日

芸術風土記

   岡本太郎著『日本再発見~芸術風土記』角川ソフィア文庫を読んだ。
 初出は1957年であるから岡本太郎がカメラを片手に巡った日本は戦争直後でもないし経済成長に狂奔もしていない微妙な時代である。
 小学生の私が見ていた世間~世界である。

 あれから時代は超がつくほど大きく何度も変化した。
 街並みも人間も・・・
 ところが岡本太郎が各地で感じた、そして未来を予想した「文化」の問題は見事に的を射ていた。ただただ脱帽するしかない。

 「大阪」の章が後ろの方にあった。
 きっと東京の人が読めば面白いのかもしれないが、私の印象ではこの本の中で一番面白くなかった。
 岡本太郎がけなしているというものでもない。ただこの街の混沌にさすがの太郎も分析しきれなかったのではないだろうか。

 東京人の官僚的事大主義に対して、例え誰がなんと言おうと自分でいいと思う道を突き進む大阪人を探したが、そんな大阪人は1957年時点でもういなくなっていたと嘆いているように読めた。

 文化芸術でいえば、その後の大阪の大失敗は阪大、外大、関大等の大学を市内から放り出したことにあるような気がする。
 そうしておいて、ワッハ上方、大フィル、文楽、果ては大阪府大と市大の統合のように、文化や芸術に対してまるで憎しみを抱いているかのような政治を産み出した。
 この本全体には感動すら覚えたが、大阪の章で私の気分は少々落ち込んだ。

    虐待を何故見逃したと報道す役人減らせと叫びし口で
              障害のある子を檻に入れていたというニュースを聞いて

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