2017年11月5日日曜日

日米合同委員会

   矢部宏冶著 講談社現代新書『知ってはいけない(隠された日本支配の構造)』を読み終えてから大分経つ。あまりに内容が濃いのでブログ記事にできなかった。
 まあ「下手の考え休むに似たり」という箴言(しんげん)もあるから、その本から教わった日米合同委員会について少し書く。

 日米合同委員会というと、2011年の鳩山内閣崩壊のときに話題になっていた。
 鳩山首相が沖縄の普天間基地の県外・国外移転を考えていたとき、一挙に官僚トップや大手マスコミから激しいパッシングを受けて、「ああ官僚たちは選挙で選ばれた首相ではない、なにかほかのものに忠誠を誓っている」と呟いたこと、それが日米合同委員会であることは赤旗かなんかで読んだことがある。
 だが私も「そういうものかな」程度で済ましていた。

 その日米合同委員会の本会議は日本側6人、アメリカ側7人が出席して月にだいたい2回開かれている。外に30以上の分科会がある。
 本会議の日本側代表は外務省北米局長、代表代理が法務省大臣官房長、農水省経営局長、防衛省地方協力局長、外務省北米局参事官、財務省大臣官房審議官。
 米側代表は在日米軍司令部副司令官、代表代理が在日米大使館公使、在日米軍司令部第5部長、在日米陸軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海軍司令部参謀長、在日米海兵隊基地司令部参謀長である。

 ご覧のとおり、日本側が各省のエリート官僚であるのに対して、米側は大使館公使1人を除いて全員が軍人である。つまり、米国と日本国の委員会ではなく、米軍と日本国の委員会である。
 その歪さは、沖縄返還交渉を担当したスナイダー駐日首席公使が大使に対して「本来なら、ほかのすべての国のように、米軍に関する問題は、まず駐留国(=日本)の官僚と、アメリカ大使館の外交官によって処理されなければなりません。ところが日本における日米合同委員会がそうなっていないのは、ようするに日本では、アメリカ大使館がまだ存在しない占領中にできあがった、米軍と日本の官僚とのあいだの異常な直接的関係が、いまだに続いているということなのです」(アメリカ外交文書1972年4月6日)と激怒していることからも明らかだ。

 この非公開の会合での決定事項が、首相よりも国会よりも憲法よりも優先されて政治は廻っている。
 対米従属というが、正確には「占領中にできあがった異常な国家」、対米軍従属の半主権国家というのが我が国の根本矛盾なのである。
 2012年野田首相がオスプレイの普天間配備について、「オスプレイの配備については、日本側がどうしろこうしろという話ではない」と言ったのは、日米合同委員会を知る当事者としては極めて正直な感想だったのだ。

 知れば知るほど怖くなる「隠された日本支配の構造」。史料の地道な積み重ねには説得力がある。
 このブログをお読みになった皆さん。
 長谷やんに騙されたと思って、講談社現代新書、矢部宏冶著『知ってはいけない』を是非とも購入していただきたい。
 このブログの何百倍も何千倍も内容は濃い。
 イバンカのスーツの色がどうだとか、トランプとのゴルフの料金はいくらだとかというようなニュースに何の意味があるというのか。

2 件のコメント:

  1.  先日、この本をブックオフで見つけ、気にかけていたのですが、他の書棚をめぐっているうちに買いそびれ、後悔しているところです。
     ところで、講談社のPR誌「本」の11月号で、矢部宏冶氏と田原総一朗氏のが「これが『日本の現実』だ」と題して対談しています。ブログに紹介されていたような日米の密約をめぐって対談が進んでいくのですが、対談の最後に矢部氏が、「自衛隊(日本)に返還された米軍の富士演習場は、いまだに年間270日は米軍が優先的に使う密約が結ばれている。つまり事実上米軍基地のままということだが、これから米軍基地の返還が進み、表向きは自衛隊基地なのにその実態は米軍基地、という形がどんどん増えてくるかもしれない。今後厳しく注視していく必要がある」と危惧されていました。6ページほどの短い対談ですが、まさに、知れば知るほど怖ろしくなりました。
     もう一度ブックオフへ行って、売れてしまっていたら、ぜひ新刊でぜひ読んでみたいと思います。

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  2.  猫持さんコメントありがとうございます。
     コメントの仕方について、「ロボットではありません」→「公開」のツーステップでOKだったとのことで安心しましたが、それであれば何故これまでが上手くいかなかったのか不思議です。
     とりあえず「結果よし」です。
     この本のことについては第2弾として明日UPしますので、そちらの方にもこのコメントをコピーさせていただきます。ありがとうございました。

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