2017年9月2日土曜日

ナチスを例えること

ニューイングランドホローコースト記念博物館の英語版碑文
   麻生副総理は2013年に憲法改正をめぐって「ナチス政権に手口を学んだらどうか」と発言し、国内外特にサイモン・ウィーゼンタール・センターなどユダヤ人社会から強い批判を浴び撤回したことがあるが、今般8月29日、麻生派研修会の講演で「少なくとも(政治家になる)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんだ」と発言した。
 本人は「政治家のあり方に言及した際の文脈での発言だった」と弁明したが、今回も内外の批判を受けて発言を撤回した。

 言葉尻、揚げ足をとる気はさらさらないが、中学校の国語の問題で「この発言者はヒトラーをどう評価しているか」と問われたら、「発言者は、ナチス・ヒトラーの政治の動機は正しかったが政策の結果がまずかったと考えている」というのが正解だろうと思う。
 それが読解力というものだ。

   実際、欧米では日本国内の何十倍もの規模で正しく報道され批判されている。
 本人は日本国内の世論に反省したのではなく、アメリカ政権の「その筋」からの批判の大きさに驚いて「撤回」したのだと私は思う。
 右の写真は9月1日付け朝日新聞夕刊である。
 この見出しのとおり「北朝鮮情勢を警戒」して訪米が見送られたと信じるのは「思考停止」の表れで、特殊詐欺のカモだと私は思う。

 親イスラエルのトランプ政権が本気で怒って「麻生とは今後話し合えない」と一言いえば安倍政権は崩壊するだろうから、弱みを握られた安倍政権は今後ますますトランプ政権に対して決定的に従属を強めることだろう。トランプにしてもそういう「生殺し」にうま味がある。

 さて、ナチスというと約580万人(150万人という説もある)といわれるユダヤ人大虐殺(ホローコースト)があまりに有名だが、少なくない日本人は「遠くの出来事」だと誤解していないか。
 私は内田樹著『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)を2冊持っているが、その理由は一度読んだだけでは頭に残らなかったので間違って再び購入したというものだ。
 そういう私を日本人の代表とは言わないが、そもそも「ユダヤ人とは誰のことか」の理解からして一般的日本人のレベルでは知識不足で難解である。

 それはさておき、ナチス・ヒトラーはユダヤ人大虐殺に先行して、あるいは並行して、共産党員、社会民主党員、労働組合員、ロマ(ジプシー)、エホバの証人、同性愛者、障害者等を迫害・虐殺している。そして多くの良心的な市民や聖職者も・・。
 障害者は1933年に40万人が「強制処分」され、1940年に数千人が「浄化」された。
 それが「ヒトラーの政治」だったのであり、麻生副総理はそれにシンパシーを抱き「動機は正しかった」と肯定しているのである。
 もしそうでなかったなら撤回などせず、「表現の自由だ」ぐらいを言い放って啖呵を切ればよい。

 蛇足ながら、当時のドイツの神学者マルティン・ニーメラー牧師は『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』という有名な詩を残していて現代人に貴重な教訓を教えている。

 ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった
 私は共産主義者ではなかったから

 社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった
 私は社会民主主義ではなかったから

 彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった
 私は労働組合員ではなかったから

 そして、彼らが私を攻撃したとき
 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった

 「歴史に学ぶ」というのはこういうことを肝に銘じるということだろう。
 私たちの国の政府は、かつてそのナチスと三国同盟を結び、「日本國ハ「ドイツ國」及「イタリヤ國」ノ歐州ニオケル新秩序建設ニ關シ、指導的地位ヲ認メ、且ツコレヲ尊重ス」「三國ハアラユル政治的經濟的及軍事的方法ニ依リ相互ニ援助スヘキ事ヲ約」したのである。

 そういう戦犯たちを英霊と称して靖国神社に祀り、今も大臣や政治家たちがお参りし、真榊などを奉納している。


 だから、例え戦後生まれであったとしても「知らなかった」で済む話ではないし、知っていて知らぬ顔をするのはなおいけない。
 こんな人物を副総理に戴く内閣は早々に退場願いたい。
 「撤回しました」を了とするのでなく、コメントやリツィートで声を広げる必要があるように私は思う。
 「学びて行わざれば則ち罔し」ともいわれる。
 ニーメラー牧師は声をあげることの大切さを切々と訴えている。

    子らの声天高く消え新学期 

2 件のコメント:

  1. 安倍内閣の下に今、生じているさまざまな事象は一見バラバラな場面で起こっているようですがその背景、底流は同じものだと思います。反「自民」の小池都民ファーストも、次期リーダーを狙っている麻生副総理も。こんな連中が政権のたらいまわしをしようとしている。

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  2.  ひげ親父さんの感想に全面的に同意いたします。特に都議会議員選挙後の小池都知事の旧態依然の右翼的政策について、どうして皆コメントを書こうという気にならないのかと思っておりました。
     ニーメラー牧師に学ぶなら、声をあげるべきですし、SNSを持っていなければ人のブログにでもコメントする必要があるように思います。
     コメントに反論されるのが嫌だから、反論の意見が不当だから書かないというなら、自分でブログなりなんなりで発信すべきです。ハハハハハ

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