2017年9月16日土曜日

臨時財政対策債

 堺市長選挙で臨時財政対策債(臨財債)が話題になっていた。
 耳慣れない話題だったので少しばかり調べてみた。

 そもそも現在の地方財政制度のもとでは、毎年政府は「地方財政計画」を予算案とあわせて国会に提出し、地方自治体が財政運営に支障をきたさないように対策をとることが義務づけられている。政府の義務である。
 この法的義務をふまえて、かつては、法定率分の交付税では財源が不足するため、交付税特別会計として政府が借金をして、地方交付税の一部として自治体に交付してきた。

 ところが政府は、それによる交付税特別会計の借金が40兆円にものぼるとして、特別会計の借金というやり方をやめ、大枠の考え方として、財源不足額の半分は国の一般会計から補充して地方交付税に上乗せし、残りの半分を地方自治体の借金でまかなうことにした。これが臨時財政対策債だ。ただし、ここが大切なポイントだが、財源不足の補充は国の責任なので、臨時財政対策債は名目としては自治体の借金だがその返済は各年の地方交付税で措置され、自治体には負担が生じないようになっている。

 政府のこういう臨時財政対策債方式に批判はあるが、実態としては国の借金の看板だけを自治体の借金のように架け替えたもので、実質は自治体の借金とは言い難い。
 これは地方行政では常識に属する事実なので、大阪市長時代の橋下徹もそのように繰り返し発言していた。

 ところが今般の維新の堺市長候補は、この臨時財政対策債を含めて財政問題を論じ、大阪市よりも借金の多い堺市というデマを大声で拡散している。
 先日から「ヒトラーとナチ・ドイツ」の勉強をしているが、維新候補のそれはナチスばりのデマである。

 さて、私は老人ホームの家族会の役員をしているが、会計の問題では考えさせられることがある。
 例えば、少し大きな備品や行事のためには幾らかのお金を積み立てておく必要がある。しかし、老人ホームであるから一定の会員の移動は避けられない。となると、お金を負担した人と受益する人が異なってくる。なので、この程度の組織ではあまりお金は貯めない方がよい。
 いろんな組織でも共通する課題だろう。

 しかし、地方自治体や国土交通行政などではそうはいかない。桁違いに大きな(多額の)建設等が不可避である。
 これを無借金で対応するなら、建設時に負担した住民と、その後に受益する住民の不公平が生まれる。その額も桁が違う。
 こういう場合に、受益者が公平に負担する方式のひとつが公債であり借金である。だから、何もかも私生活の家計と比べて「自治体の借金は悪だ」と捉えるのは正しくない。ただし程度問題であり、後年度の住民が返済に走り回るようではいけない。

 と押さえたうえで、ほんとうの堺市の財政状況の実態はどうか。
 堺市と大阪市と大阪府のそれぞれのホームページの平成27年度決算で「財政健全化」部分を見ると(当然、%が低いほど財政は健全)・・、
 ■ 毎年の収入に占める借金返済額の割合【実質公債費比率】
   堺市    5.5%
   大阪市   9.2%
   大阪府  19.4%
 ■ 収入に対する純負債総額【将来負担比率】
   堺市   16.6%
   大阪市 117.1%
   大阪府 189.0%      ・・であった。

 調べてみて、私はあまりの落差に驚いた。堺市の健全財政に比べて維新の首長の大阪府市の危うさは明白だ。
 いわゆる都構想が政令指定都市・堺市を解体して、大阪府(大阪都ではない)に財源(主としては堺市民の税金)を吸い上げようという魂胆は明らかだろう。
 夏井いつき先生流にいえば、この数字を見てそのことが想像できないのは「才能なし」と言われても仕方がない。
 そして吸い上げられた税金のその使い道はカジノだというのだから言語道断だと思う。

    秋祭り故郷の友からメールあり
    

0 件のコメント:

コメントを投稿