2017年5月30日火曜日

校舎たてかえ顛末記

   安倍首相、菅官房長官、佐川理財局長、トランプ、金正恩、プーチン・・・、ニュースの登場人物を見ていると気が滅入る。
 そこで、地に足の着いた体験記などを読みたくなって、この本を手に取った。
 岩波ジュニア新書だから、「人生の出発点に立っている、きみたち若い世代」に向けて書かれた本だ。
 しかし、物知り顔で書かれた出世や金儲けのノウハウ本に比べて何乗倍も内容は豊かだ。
 
 裏表紙にはこんなことが書かれていた。「緑に囲まれた敷地には野菜畑、果樹園、放牧地が広がり、酪農牛舎、養豚舎、養鶏舎が建ち並ぶ…、一学年わずか20人の小さな高校で生徒たちはいのちを育む農業を学びます。この本では自主自立、人格教育で知られるこの学校で行われた校舎づくりの顛末を紹介します。魅力あふれる学びの場はどのように作られたのでしょうか?」

 舞台の学校は三重県伊賀市にある日本で唯一の私立農業高校にして日本で一番生徒数の少ない農業高校だ。
 そしてサブの舞台は。第1期生霜尾さんが生まれた京都府舞鶴市の山奥の西方寺平という小さな集落だ。
 舞鶴市役所の職員であった著者が霜尾さんを知り、娘が愛農高校に入学し、それ故の一保護者の立場から、ついには校舎建て替え問題に事務局長として携わって奮戦した顛末記だ。

 読んだ私も建築には全くの素人だし、減築などという言葉も読む中で初めて知った。
 こんな時私だったらどうしただろうかとも思いつつ読んだ。
 農のこと、環境のこと、そして人生について考えさせられた。そして読後に爽快な風の吹くのを感じた本だった。
 世の中の不正に苛立っておられる御同輩に、ジュニアになった気持ちでちょっと読んでみませんかとお勧めする。数時間で読み終えるが余韻は何倍も続く。

 あとがきで著者は映画「同胞(はらから)」の主人公の台詞を引いて、「人生に、あんなに夢中な思いをすることが何回もあるといいと思います」と書いている。
 「終活をしている」などと得意げに語るシニアよりも、いつまでも一つ一つの目の前の課題に夢中になりたいものだ。

    人生をジュニア新書に教えられ (川柳)

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