2017年1月18日水曜日

内心処罰は怖ろしい

 労災保険制度の通勤災害のQ&Aに、「退勤時に〈駅前でいっぱいやろう〉と言いながらいつもの駅に向かっている途中交通事故に遭ったのは通勤災害か?」というのがある。
 疑問点は、「いっぱいやろう」と誘い合って歩き始めたときからそれは退勤というよりも飲み屋へ向かう行為ではないかという点にあるが、答は特段の事情のない限り通勤災害になるというのが正解である。「心は罰しない」が、法の根本原則だから。

   さて、安倍首相が20日からの通常国会に提出を狙う「共謀罪法案」は、以上の例え話に真っ向から違背する。
 行為としての犯罪を処罰するのでなく、思想や言論、つまり個人の内心を処罰するという。
 内心を処罰のためには、盗聴、密告、スパイ行為が欠かせない。
 この法案は必然的にそういう警察国家を作り上げる。

 内心処罰なら「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍首相自身が憲法違反で罰せられるべきだし、真珠湾で「和解」した稲田防衛相が帰国翌日戦争犯罪人に「謝罪」した「内心」は偽証罪になる。というような正論たる笑い話で済ますことはできない。

 共謀罪を含んでいた戦前の治安維持法の逮捕者は数十万人を超え、送検されただけでも75,000人を超え、弾圧が原因で命を落とした人も1,682人を超える。

 写真に掲げたが、治安維持法施行当時の警視庁の説明は「労働者や思想家たちはあまりにこの法案を重大視し悲観的に考えているようであるが・・・伝家の宝刀であって余り度々抜くつもりでもない」というものであった。
 また内務省警保局長は「われわれの方でも運用については非常に注意し純真な労働運動や社会運動を傷つけないよう心がけている」と言っていた。
 つまり、Post-tryth(ポスト真実)ではないが、それらは真っ赤な嘘だった。

 だから、「一般の方々が対象になることはあり得ない」と6日に発言した菅官房長官こそが一番の「内心処罰」の対象者なのだが、もちろん彼は権力の側であるから罰せられない。 
 なので私は、それを刑法で裁くのではなく、世論の力で裁きたい(法案阻止したい)と思っている。
 いま私は、青木理著「日本会議の正体」(平凡社新書)を読んでいるが、安倍晋三の唱える「戦後レジームからの脱却=戦前回帰」は本気である。
 そのことを馬鹿にしている知識人は、トランプ当選に慌てている米知識人と同じ屈辱を味わうかも知れない。

  15日付け東京新聞「本音のコラム」で山口二郎法大教授は菅発言を受けて、「誰が一般の方々なのか。誰が決めるのか。「本音のコラム」読者などは真っ先に一般でない方々に認定されるかもしれない。まずは共謀罪を止めさせるために共謀しよう!」と訴えている。けだし名言である。

    寒波きて内心処罰のニュースあり

2 件のコメント:

  1. 労災保険の認定基準に絡めての安倍政権の「共謀罪」批判は秀逸です。安倍・稲田・菅は事前共謀罪で有罪ですな!赤旗の「潮流」の「伝家の宝刀」も的確です。

    返信削除
  2.  意図的に「天下の宝刀」と誤用する人あり。なるほど共謀罪法案は天下(権力)の宝刀ですね。

    返信削除