2016年12月3日土曜日

ヒリヒリ、アツアツ

 私は20代後半には東京にいて、陳建民(1919-1990)氏のグループの店のヒリヒリと超辛くて旨い麻婆豆腐の虜になったが、関西に帰ってからは食べる機会を逸していた。

   そして、それよりも前の20代前半にはよく大阪千日前の珉珉で皮の薄い餃子を食べていたが、これもその後あまり食べる機会がなくなっていた。その理由は別になく、歳とともに少しお洒落な店に行ったからだろうか。
 
 で先日、古書を渉猟しようと思ってわざわざ千日前ビッグカメラ西の天地書房に足を向けたところ、これが移転か閉店をした模様でまるで浦島太郎の気分を味わった。

 そこでいくらか肩を落として千日前周辺を歩いてみると、なんと、珉珉千日前本店がまだあった。
 と驚くのも、昔は戎橋筋と千日前筋を結ぶ東西の少し大きな通りの真ん中に大きな丸い提灯があって、余談ながらその前には「啖呵売」の店があり、その提灯のところを路地に入っていくのだったが、その提灯をもう何年も見ていなかったので、てっきり、「餃子の〇〇」に敗れて閉店したのだと勝手に想像していたからだった。

 なので、即餃子付きの麻婆定食を頼んだところ、餃子は皮の薄いあの珉珉の味の上に、熱々の器に入った四川麻婆豆腐が花山椒たっぷりで、つまり、陳建民流の麻婆豆腐で、猫舌の私はヒリヒリアツアツ、アツアツヒリヒリ喜びながらのたうちまわった。それでいて値段は格安。
 心は一度に20代に飛び、先ほどまでの天地書房肩透かしによる落胆が嘘のように満足した。
 
 家に帰ると妻が「今日は何食べたん?」「オムライス?」「天津飯?」と聞いたが、あの自分史的感動を言葉で伝えることは無理だと感じたので、「内緒!」とだけ答えた。

   青春の店あり味あり冬の暮

6 件のコメント:

  1. やっぱり餃子は珉珉でしょう!チェーン店だからどこも同じ味という訳ではなく今は無くなりましたが梅田阪神横の闇市跡にあった珉珉の餃子と焼き飯は旨かった。それと、ありましたね、確か「バッタ屋」と呼んでいたような気がします。板に新聞紙をぐるぐるに巻き付けテープで止めたものをテンポよく、バシバシと叩いて客を呼び込んでいました。

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  2.  珉珉の店には全く行っていなかったわけではないのですが、千日前店には長い間行っていませんでした。そして、千日前店の雰囲気は独特で味があったように記憶しています。そんなもので、この記事のような感慨がよみがえってきました。
     千日前店か堺東店?か忘れましたが、「茅渟の海」さんともよく行ったような気がします。懐かしい思い出です。

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  3. 懐かしいですね。まだ、ありましたか。叩き売り屋さんはないのですね。あの口上はなかなかのものです。フーテンの寅さんを思い出します。昔、よく行きました。この珉珉では食べるのは決まっていて、餃子二人前(注文を受けた店員さんがコーテルリャンガーと叫ぶ)とレバニラ炒め、もやし炒め、野菜炒めのいずれかとごはんとビールでした。麻婆豆腐は食べたことがなかったです。「餃子の○○」より珉珉の餃子の方が格段に美味しいです。また、行きたくなりました。

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  4.  dyougojiさんコメントありがとうございます。そうそう「コーテルリャンガー」でしたね。確かに私も当時は麻婆豆腐は食べていませんでした。私は当時からピータンが好きでした。少しずつ思い出してきます。こういう回想も認知症予防に役立つでしょうか。
     そして「餃子は珉珉の方が好き」も同感です。余談ですが、同じ感覚でいえば551も豚まんは大好きですが餃子はイマイチのように感じています。
     お尋ねの「叩き売り」はありません。あの道は少し寂しい通りになっています。

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  5. 今日、日本橋の電子部品屋に行った帰り道、道具屋筋を通りましたが、入口(吉本の方)すぐのビルの2階に古本屋の「天地書房」がありました。最近開店(移転)した様子です。難しい古本ばかりならんでいましたから多分そうだと思います。大黒さんの置物は有りませんでしたが。

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  6.  検索するとそのようですね。
     奈良の餅飯殿にも古書店は数店ありますが、少し私の気分とマッチしません。
     新書、古書を問わず、私の気分と馴染む書店とそうでない書店があります。全く個人的な感覚ですが。
     なお、上六店にあった大黒様は上六店の閉店時になくなったようです。

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