2016年8月7日日曜日

情報番組のPR枠

   殿村美樹著「ブームをつくる」(集英社新書)で知ったことだが、私たちがテレビで普通に情報だと理解している事項が実は隠れCMだというので少し驚いた。
 次の例えが当っているかどうかは知らないが、情報番組の1コーナーで「〇〇デパートで今までにない北海道展が開かれ人気の為人々が押し寄せている」というようなルポが、実はその部分は最初からCM枠(PR枠という)だという。
 『「ちょっとすごいことが起こっている」という、そういうニュースなのだ』と思って記憶にインプットされたそれが、実は元々仕組まれた隠れCMだったという。
 他愛ない話のように見えて、これって少し怖ろしくないですか。

 そういえば、少しよく似たことはラジオが以前からしていたことだ。
 アナウンサーがCM原稿を演じている振りを一切感じさせないで、100%自分の感想のようなコメントをして商品をCMする手法だ。
 テレビの通販よりも何十倍も妙な説得力を感じたのは私だけだろうか。
 読者のご感想は如何だろう。

 オレオレ詐欺とCMは別問題ではあるが、人々を騙す科学(心理学)という意味ではよく似ている。そしてそれは日々急速に進化している。
 以前の記事で、ビューティフルサンデーの歌に乗せて懐かしい画面が入れ替わる素晴らしいCMが実は不誠実に原発再開を企む関西電力のそれであることを指摘したとおりである。
 とまれ、CMが怪しからんと言っても始まらないように私は思う。
 それよりも、電波の許認可権を政府権力が握っていること、民報も新聞も基本は大企業の広告料でもっていることを常に振り返ってみて、一人ひとりが情報を吟味することが大切だろうということを本気で考える。

 「NHK朝ドラだけは平和主義」という記事を書いたことがあるが、少し前の「とと姉ちゃん」の花山伊佐次は「あなたの暮し」に広告は取ってはならないと常子と大喧嘩をした。
 広告に依存したなら広告主の圧力は避けられないという。至極正論だ。
  実際の「暮らしの手帖」はその際の一度を除いて一切広告を取らずに矜持を守った。

 情報番組のPR枠のように、巨大な情報操作で現代社会は成り立っている。
 そのことをほとんどの国民は認識しないで、自分は正しい情報に基づいて的確な判断をしたと信じている。
 それをある意味で「戦争前夜」だと怖れるのは心配性だろうか。
 イラク戦争前夜に私は「フセインは原爆の卵ぐらいは作っているだろう」と信じてしまったが、読者の皆さんはどうだった。

 因みに、日本で発行されている日刊新聞の中で唯一「赤旗」だけが大企業の広告を一切断っている。
 その一事だけでも、「赤旗」をセカンドオピニオン並に購読することには大きな意味があるように思う。

 「甘いよ・・・・常子さん!」という花山の言葉は、現代の国民全部が噛みしめるべき言葉であるような気がする。

4 件のコメント:

  1. 「国際流行色協会」があるのを御存知ですか。勿論「日本流行色協会」JAFCAもあります。イギリス、フランス、イタリア、日本、韓国等13か国が加盟している組織です。毎年年2回会議が開かれ2年後の流行色を決めます。繊維メーカーは会議の決定で素材等を開発しそれを受けてアパレルメ-カーはその素材で約1年かけて商品開発を行ってパリやミラノでファション発表して我々は半年後の色やデザインの「流行」を「知り」ます。「流行」は業界が作り出すということです。良し悪しは別としてメディアの情報は業界やスポンサーが仕組んでいる事だと思います。勿論「国家支配権力」も。

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  2.  スノウさん、ありがとうございます。私の兄が糸偏で働いていたものですから流行色の流れは知っていました。
     おっしゃる通り、なんとなく庶民のニーズで起ってきたような流行なども、庶民など知らぬ場で仕組まれているということですね。
     ということを知ったうえで日々暮すことは大切なことだと思います。

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  3. 大きな流れで言うと、戦前のように権力が真実を恐れていた時代は検閲をして、情報が社会に出ていくのを統制しようとしていたのが、出版や報道が大々的になってくると事前の完全な検閲は不可能となり、では社会に出た情報の流れをコントロールすればよいと変わったのだと思います。真実も屑に埋もれてわからなくなるのです。「王様の耳はロバの耳」と言うことに耳をとがらせた時代はほぼ終わり、「王様の耳はロバの耳、だとしたら、何か?」という時代に変わっています。情報がどう流れていくかということに権力がものすごく力を注いでいます。でも、この変化に権力でない側が今一つ対応できていないし、あまり問題の所在もわかってないのではないでしょうか。誰が情報の流れを仕組んだかどうかではなくて、情報の伝わり方自体を変えていかないといけない。相手は量で攻めてきており、めちゃくちゃ難しい課題なのですが、知恵を出さないといけませんね。

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  4.  一瞬にして世論が変わるような特効薬はないし、日々の地道な行動が大切だということは全くそのとおりなのですが、そこで議論を終えると「思考停止」になりかねません。
     上手くいかなかったことを考え反省する姿勢を「敗北主義」のように見なすのは正しくありません。
     三人寄れば文殊の知恵! 知恵は話し合う中から生まれます。みんなで大暑気払いでもしませんか。

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