2016年7月3日日曜日

井上章一氏の卓見と大後悔時代

 新書大賞2016第1位「京都ぎらい」の著者井上章一氏が京都民報に書かれた文章に目から鱗という言葉を思い出した。

   タイトルは『「美しい日本」に違和感 文化に価値見出す国へ』というもので、最初に『安倍さん(首相)は「美しい日本」「戦後レジームからの脱却」を唱えてこられましたが、そこでなぜ「レジーム」というフランス語を操らんならんのか。そんな人に「美しい日本」を語って欲しくありません』とあり、その後に目から鱗の『第2次大戦中、イタリアの参謀本部はローマを空爆された翌日に敗北を決め、日独から「ふ抜け」とののしられました。イタリアは、戦争の勝ち負けより、文化財の温存を優先したわけです。東京や大阪が焼けてもがんばった日本に、守るべき文化財はなかったのか。私はイタリアにコンプレックスを感じています。』とあった。

 そういえば、実際、私の小さい頃、つまり敗戦から15年ぐらいまでの私の周りでは、「日独に比べてイタリアはふ抜け」という言葉が飛び交っていたし、小さい子供たちも文句なくその言葉を使っていた。
 それを井上氏は「私はイタリアにコンプレックスを感じている」と言う。

 続けて氏は、『日本を攻めるのは、世界的な文化の損失になると、そう思ってもらえる国づくりが大事である・・』と。卓見である。


 さて、ここ数日、『イギリスの大後悔時代』という文字がメディアで多用されている。
 ポピュリズムを煽る「大阪維新」「安倍政権」「トランプ」に熱狂する人々の明日の姿だろう。
 ビールを傾けてナイターを見ながら「もっと胸元へ投げてビビらしたれ!」という調子で軍拡を煽り戦争法制を煽り、他民族を蔑視すような風潮の先には大後悔が待っていることを今回のイギリスは白日の下に示した。
 投票結果の後、離脱派は煽りに煽ったEU拠出金の数字が間違っていたといい、それを医療費に廻すと言っていた主張を撤回すると言い、移民がゼロにできるわけでないと言い出した。

 さてさて、1994年にアメリカが北朝鮮を先制攻撃する作戦を決定したことがあるが、その折の米軍のシミュレーションでは▼開戦90日で5万2千人の米軍が被害を受ける。▼韓国軍は49万人死亡する。▼在韓米軍と在日米軍の約8割が被害を受ける。▼米国人8万~10万人を含め民間人から100万人の死者が出る・・というもので、これが、都市を対象とした現代戦のリアルな姿である。

 冷静に付け加えるなら、日本海に原発を並べておいて「何おかいわんや」だろう。
 「北東アジア平和友好条約」を目指す外交力・交渉力というと「生ぬるい」という声もあるが、それを進めるのが大人でありリーダーではないのか。
 私は井上章一氏の主張(度胸)に敬意を表する。拳々服膺したいと思っている。
 日本の大後悔時代が始まらないよう、こういう冷静な大人の意見に耳を傾けたい。

3 件のコメント:

  1.  首相が「強いニッポン」とヒットラー似の金切り声でよばわる現代、「ふ抜けと言われてもええのん違う」というのは見事な対案で正論だと思う。

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  2. 作詞家なかにし礼氏が、2014年7月集団的自衛権行使容認が閣議決定された日の感想を毎日新聞に「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗を始めよう」と書いた。へなちょこでもいい、めめしくてもいい、女の腐った(と彼らは言う)のでもいい、声を上げ続けよう!それが平和の礎となる。

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  3.  ひげ親父さん、全く同感です。その詩は2014年8月1日に「戦争体験者の詩」としてこのブログに掲載しました。
     勇ましい言葉を吐く者ほど弱虫だというのは古今東西の真理でしょう。

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