2016年7月2日土曜日

生長の家と立正佼成会の見識

 昨日の記事で触れたが、宗教法人「生長の家」の参議院選挙に対する方針が注目されている。
 解説記事を書くと誤解を招くといけないので、要所を抜粋して以下に掲載する。
 全文は生長の家のHPに載っている。

 ■ 今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針
 ■ 「与党とその候補者を支持しない」

 来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました。その理由は、安倍政権は民主政治の根幹をなす立憲主義を軽視し、福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼働を強行し、海外に向かっては緊張を高め、原発の技術輸出に注力するなど、私たちの信仰や信念と相容れない政策や政治運営を行ってきたからです。

 (中略) 当教団は生長の家政治連合(生政連)を結成(1964年)して、全組織をあげて選挙活動に取り組んだ時代がありました。しかし、やがて純粋な信仰にもとづく宗教運動が政治運動に従属する弊害が現れ、(中略) 1983年に生政連の活動を停止しました。(中略)

 (中略) ところが安倍政権は、旧態依然たる経済発展至上主義を掲げるだけでなく、一内閣による憲法解釈の変更で「集団的自衛権」を行使できるとする”解釈改憲〟を強行し、国会での優勢を利用して11本の安全保障関連法案を一気に可決しました。これは、同政権の古い歴史認識に鑑みて、中国や韓国などの周辺諸国との軋轢を増し、平和共存の道から遠ざかる可能性を生んでいます。また、同政権は、民主政治が機能不全に陥った時代の日本社会を美化するような主張を行い、真実の報道によって政治をチェックすべき報道機関に対しては、政権に有利な方向に圧力を加える一方で、教科書の選定に深く介入するなど、国民の世論形成や青少年の思想形成にじわじわと影響力を及ぼしつつあります。

 最近、安倍政権を陰で支える右翼組織の実態を追求する『日本会議の研究』(菅野完、扶桑社刊)という書籍が出版され、大きな反響を呼んでいます。同書によると、安倍政権の背後には「日本会議」という元生長の家信者たちが深く関与する政治組織があり、現在の閣僚の8割が日本会議国会議員懇談会に所属しているといいます。これが真実であれば、創価学会を母体とする公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。事実、同会議の主張と目的は、憲法改正をはじめとする安倍政権の右傾路線とほとんど変わらないことが、同書では浮き彫りにされています。当教団では、元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、同書にあるような隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧に耐えない思いを抱くものです。先に述べたとおり、日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的です。(中略) 私たちは、この“原理主義”が世界の宗教の中でテロや戦争を引き起こしてきたという事実を重く捉え、彼らの主張が現政権に強い影響を与えているとの同書の訴えを知り、遺憾の想いと強い危惧を感じるものです。

 当教団は、生政連の活動停止以来、選挙を組織的に行うなどの政治活動を一切行ってきませんでした。しかし、政治に触れる問題に関して何も主張してこなかったのではなく、谷口雅宣現総裁は、ブログや月刊誌を通して“脱原発”や“自然エネルギー立国”を訴え、また日米の外交政策を分析して、それに異を唱えたり、注文をつけたりしてきました。また、昨年は憲法を軽視する安保法案に反対する立場を明確に表明されました。

 私たちは今回、わが国の総理大臣が、本教団の元信者の誤った政治理念と時代認識に強く影響されていることを知り、彼らを説得できなかった責任を感じるとともに、日本を再び間違った道へ進ませないために、安倍政権の政治姿勢に対して明確に「反対」の意思を表明します。この目的のため、本教団は今夏の参院選においては「与党とその候補者を支持しない」との決定を行い、ここに会員・信徒への指針として周知を訴えるものです。合掌。

     2016年6月9日 
                  宗教法人「生長の家」



 ■ 今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針(その2)
 ■ 不支持政党を追加

 生長の家は、宗教者としての純粋性の表現と、国の進む方向を誤らせないために、69日付で発表された会員・信徒への指針「与党とその候補者を支持しない」ことに加え、憲法改正を急ぐ「おおさか維新の会」、および安保関連法案に賛成した政党(自民党、公明党、日本のこころを大切にする党、日本を元気にする会、新党改革)とその候補者を支持しないことを表明します。

 なお、選挙での各個人の投票は、本人の自由意思に基づくべきですので、会員・信徒の皆さまにおいては、あくまでも各人の意思で決定して下さい。

     2016622
                  宗教法人「生長の家」



 関連して以下に「立正佼成会」の見解も掲載する。


 ■ 宗教法人「生長の家」の教団方針に賛意を表します。

 宗教法人「生長の家」が6月9日、今夏の参議院選挙に対する教団の方針を公表されました。

 「福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼動を強行」したエネルギー政策のあり方に警鐘を鳴らし、「憲法解釈の変更で『集団的自衛権』を行使できるとする〝解釈改憲〟」を憂慮する見解に、賛意を表します。
                  (立正佼成会)


 ■ 「私たちの切実」

 「戦争に負けた時には焼け野原であった国が、わずかなうちに 世界の中で一番経済的に安定した国になった。治安も日本ほどいい ところはない。どなたのお陰かといえば、残念ながら宗教者では なく政治家のお陰なんです」
 「我々はいまあまりに幸せすぎて、政治なんて関係ないと、宗教家 は朝から線香立てて、ろうそくつけて拝んでいればいいというが、 そんなことはない。憲法の根底は主権在民。我々が権利を持って いるんです。我々が立派な政治家を選ばなければ、いい政治になど ならんのです」
 一九八〇(昭和五十五)年の創立記念日の式典で、庭野開祖はこう 述べています。私たちはこの言葉の重大さにようやく気づくことが できました。
 これから、私たちは参議院議員選挙を迎えます。この選挙は、 これまでとは違います。私たちが、日本という国のあり方を決定 する、歴史的選択となるのです。
 私たち日本人は、先の大戦で「剣をとって起()つ者は剣に よって滅びる」という人類普遍の真理を学びました。犠牲となられた多くの人々は、その尊いいのちと引き換えに、私たちに、「国民主権」 「基本的人権の尊重」「平和主義」という精神に立つ日本国憲法を 遺してくださいました。戦後の歴代政権はその精神を尊重し、日本を 平和と繁栄に導いてきたのです。ところがいま、その根幹が崩れよう としています。
 昨年の「安全保障関連法」の強行採決によって、憲法を守るべき時 の政権が恣意的に解釈を変更できる、という既成事実が生まれまし た。「あの日」、私たちは気がつかないうちに大切なものを失ってしま いました。それは信頼に基づく民主主義です。
 例えば、すでにメディアは以前のように多様な意見を紹介する ことに困難を感じているようです。「国境なき記者団」によるランキ ングで、六年前に十一位であった日本の報道の自由度は、現在七十二 位に転落してしまいました。
 こうした事態を招いてしまった原因は、残念ながら私たち自身に もあります。生活の安定に心を奪われ、政治や社会が変化している ことに気づくことができなかったのです。
 今、私たちは危機感をもっています。 この選挙において、私たち一人ひとりが行う選択(投票)は、子どもが、孫が、そして今を生きる私たち自身が、どんな国に生きるのか を決定づけます。取り返しがつかない、まさに「切実」な日と なります。いま一度、「信頼」できる政治を取り戻すために、私たち は主権者として、仏教徒として、この選挙に真摯に臨んで参ります。
 日本では古来、「和を以って貴しと為す」の精神を基に、大和 (だいわ)の国を築いてきました。これからの日本の国のあり方が、 私たち一人ひとりの選択によって決まるのです。
     平成二十八年六月二十一日
                         立正佼成会

 ・・・引用は以上。
 私などは、生長の家や立正佼成会は自民党を支える有力団体だと思っていた。
 特に生長の家は、右翼団体「日本会議」の屋台骨だと思っていた。
 しかし今回、良い意味で君子は豹変し、真面目な宗教者が安倍自公政権の危険性を真っ向から批判をしていることを知った。
 宗教団体が信仰という権威で『政教一致』の行動をとることは正しいとは思わないが、宗教者や宗教団体が信仰にもとづき政治を語り見解を発表することは当然のことだと思う。
 そして、以上に引用した生長の家と立正佼成会の見識は尊いものだと私は評価する。

4 件のコメント:

  1. それにしても創価学会の仏教教団としての政治に対する姿勢は何という事でしょう。公明党は仏教の教えとは相反すると思います。又、他の既成仏教宗派も釈尊の教えの立場に立ち今の日本の政治に対してはっきりとモノを言うべきだとおもいます。

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  2.  スノウさん同意。佐高信著「自民党と創価学会」(集英社新書)という本によると、創価学会は土地売買や建設工事であちこちでモメゴトを起こしていて富士宮の地元の山口組傘下後藤組に相談していた。また学会本部が街宣車に悩まされていたことでも相談していた。その後「公明」代表の藤井富雄が後藤組長に会い、「反学会」だった亀井静香さんら4人の名前をあげて「この人たちはためにならない」と受け取りようによっては襲撃を依頼していた。その密会ビデをを自民党が入手し、非自民細川政権に参加していた公明党を揺さぶった。後に野中広務は「こうして叩きに叩いたら向こうからすり寄ってきたんや」という。これが自公連立の大きなきっかけの一つだったと指摘していて、読後、背筋が寒くなりました。

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  3. 追加コメント。一行目の後に「学会員の投票の自由を否定して」を挿入します。

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  4.  先のコメントの続きですが、創価学会はまた富士宮市議会百条委員会つぶしのために後藤組を散々使ったあげく、それがマスコミで叩かれると、「それは除名した山崎正友と後藤組長の個人的なこと」とシラを切った。それに後藤が「汚れ仕事だけをさせといて」と怒り「私は仁義は守るが奴らは汚い」と反発すると、富士宮署に「後藤組壊滅対策本部」ができて1年足らずのうちに60人以上がぶち込まれたと後藤組長が述懐している。こうして創価学会と池田のためなら憲法改悪でも海外派兵でも何でも自民党について行く公明党になっているらしい。
     犯罪者が、その犯罪を知っている悪人に脅迫されて更なる悪行にはまっていくというサスペンスドラマを地でいく話ではなかろうか。

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