2016年7月14日木曜日

永六輔さんの尺貫法復権運動


 永六輔さんのご逝去が報じられたが、私は2012.12.12の「鯨が出てきた」の記事で永六輔さんの「尺貫法復権運動」を取り上げたことがある。
 先日もテレビのコメンテーターが、「永さんは左翼の人だったが尺貫法という伝統を守れと闘った珍しい人だ」的に解説していた。
 こういうテレビコメンテーターの誤ったステレオタイプの解説にはほんとうにうんざりする。

 奈良の街などでは、自民党がやたらと文化財を壊し金儲けに加担するのに対し、文化を守れ、伝統を守れと一番積極的に運動しているのが政党レベルでは共産党である。
 大阪でも「文楽など不要」と言って補助金を大幅に削った維新に対して、文楽を守れ、上方文化を守れと一番運動したのは政党レベルでは共産党である。
 「歴史、文化、伝統」と共産党は親和性が高いのである。
 コメンテーターの知識は、保守という言葉の響きからそれが伝統保護的で、革新という言葉のニュアンスから伝統に否定的なんだろうという中学生レベルの想像の程度だと思う。

 伝統的な尺貫法を無視しては、和服の仕立ても歴史的建物の復興・再建も不可能だ。
 永さんは、尺寸の物差しを売ることも禁止(つまり有罪)という悪法の下で、マスコミでも公然と販売すると公言し、警視庁に向けて「正しい法律なら販売をした私を逮捕しろ」とデモを行なったのである。
 永六輔は男だなあと思う。

 写真は私の持っている鯨尺(くじらじゃく)と曲尺(かねじゃく)の物差し。
 竹製の鯨尺の1尺はボールペンの先の378.788ミリ。
 手前の黒い曲尺の1尺は303.030ミリ。
 鯨尺1尺は曲尺の1尺2寸5分。
 なので、奈良の大仏と鯨はどちらが大きいか? 答は鯨。
 クジラはカネ(大仏)の1.25倍である。

 昨日のブログに対して何人かからメールをいただいた。恐縮している。
 お陰様でカミサマトンボ・ホトケトンボに感謝している。

6 件のコメント:

  1.  鯨尺は母親が実際に和裁に使用していたものです。
     曲尺は国立奈良博物館の売店で買ったものです。これも、永さんの復権運動がなければ売られていないことになります。

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  2. 子供の頃は共産主義は唯物論で自由主義は観念論と教えられて来ましたが、理想社会をめざすのが観念論で、金や利潤でしか価値を考えていないのが唯物論だと思ってきました。

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  3.  独特のアイロニーだと理解しました。
     私たちの目の前で起きている出来事は豊かな歴史を持っていることを、自称唯物論者はこの頃の流行り言葉でいえばリスペクトしてありのままに見つめることが必要なんだと。
     人間を語り夢を語ることのない言葉は心に届かないでしょう。

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  4. 私が愛用している作務衣は永さんが着ていたメーカーのものです。私の父は元大工で、母は和裁が好きで家の中には鯨尺と曲尺(L字型の大工用の)が普通にありました。母が縫った「はんてん」は今も重宝しています。
    七十歳になったら着物生活に替えようと野望を抱いていますが中古の着物は当然、メートルでは表示がなく、体に合ったものは見つかりません。あ~昭和も遠くなりにけり。
    カミサマトンボさん、私からも感謝です!

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  5.  私の使っているL字型の指矩(さしがね)は長手が30センチのコンパクトなものです。
     メートル法オンリーですが、角目(かくめ)や丸目(まるめ)があり、見ていて楽しいものです。
     しかし、丸太から角材を伐り出したり円周を出すこともないので「持ち腐れ」です。たまに角度を出したりしますが、よく失敗します。

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  6. 門前の小僧にはなれなくて、所々に打ってある丸目の意味も何も教えてもらいませんでした。朱色の点だけが記憶に残っています。

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