2016年4月21日木曜日

最古の労働問題

撮影日 4月8日
   前の記事で「大仏殿は我が国最古の大規模労災職業病の発生現場」という旨を記述した。
 なぜなら、大仏鋳造は、銅500t、金440kg、水銀2.5tを使用して、延べ250万人が従事したといわれている。
 伝統的な鍍金法では、金を水銀に溶かしてペースト状のアマルガムにして銅の表面に塗り付け、火で焼いて水銀を飛ばし、表面に残った金を鉄ぺらで磨き上げたらしい。
 なので空気中に大量に飛散した水銀を吸い込んだ工人たちが大量に職業病に罹患したことだろうと推測されているからである。

 何年か前に大仏殿の西側で鋳造時の銅屑が大量に見つかったが、その周辺の小川は少し先で佐保川となっている。
 なので、井戸以外には秋篠川と並んで佐保川を上水の供給源としていた平城京では、水俣病やイタイイタイ病のような公害問題があったかも知れない。

 この国が本格的な都市を造ったと同時に、労働災害(職業病)や公害も発生したのであるから、労災、公害対策も歴史は深い。
 ただし、もちろん当時は、原因が解らず怨霊や祟りとされていただろうから、現代いうところの労災、公害対策とはいえないだろうが・・・。

 因みに、奈良時代の「印刷」の役割を果たしていたのは写経であり写経生だった。
 その労働条件は出来高給の上に書き間違い分を差し引かれるという成果主義であったので、その生活は苦しかったらしい。
 だから天平年間に東大寺の写経所一同が待遇改善要求を求めた文書が残っていて、それは・・・、
一、仕事がなくなるといけないので、写経生の新規採用は見合わせてほしい。
一、去年二月に支給された仕事着をとりかえてほしい。
一、毎月五日の休暇をほしい。
一、正座作業はくたびれるので三日に一度は酒をほしい。
一、近頃途絶えている麦を、毎日給食してほしい。
一、食事をもっとよくしてほしい。
・・・・というものだから、記録上最古の待遇改善要求、労働運動といえる。
 
 あおによし~奈良の都を否定的に言うつもりはさらさらない。
 反対に、こういう視点も持てば奈良観光の奥もさらに深まるような気がしている。

1 件のコメント:

  1.  最古の職業病と書いたが、古墳時代の石棺等に丹(硫黄と水銀の化合物)や水銀そのものが大量に使用されている例がある。
     その前提として水銀採取の作業もあった。
     どこかに中毒の記録がないものだろうか。今後のテーマがまた増えた。

    返信削除