2015年11月1日日曜日

獺祭

  先日友人たちと小料理屋に入って一寸有名な清酒「獺祭(だっさい)」をいただいた。
 そして、何故ニホンカワウソ(獺)は絶滅したのかという推論を闘わせた。
 「非常に実用的な毛皮であったため乱獲されたのだろう」という、きわめて常識的な議論で終わったが。

 で、その獺祭だが、そもそもは七十二候の雨水の初侯が現在は「土脈潤い起こる」だが元々は獺祭魚で「かわうそ うおをまつる」であった。
 清酒獺祭のいわれは知らないが、七十二候の獺祭魚が二月下旬にあたることから新酒に相応しいとなったか、獺が捕らえた魚を並べるところから宴席に相応しいとなったのだろう。(ネットで見ると酒蔵の所在地の地名「獺越」から一字を採ってと書かれていたので一寸がっかり)

 元に戻って獺祭だが、先に述べたとおり獺には捕った魚を岸に並べる習性があったらしく、それがお祭りの供え物のように見え、獺が先祖の祭をしているようだということで獺祭という言葉ができたらしい。
 そのことから、詩歌を捻りだすときに机の周りに参考の書物をいっぱい拡げることをいい、晩唐の詩人李商隠は獺祭魚と号し、正岡子規も獺祭書屋主人と号した。それ故、子規の忌日を獺祭忌という。
 そんな高尚な話に掛けて話すのはおこがましいが、私も少し正確で重要な文章を書くときには椅子とテーブルではなく座卓を使用する。そして所狭しと参考になる書物などをそのページを開けて部屋中に拡げまくる。そんなことからこの獺祭という言葉が昔から身近に感じられて好きであった。

 ただ、この記事は椅子とテーブルで書いている。調べ物はネットですぐに出てくる。こんな姿勢でいいのだろうかと反問しながらも安易に流れている。
 安易に知り得た知識は同じスピードで忘れるものだ。
 獺祭を号するほどの勇気はないが、獺祭は大切にして行きたいと思っている。
 獺祭は勉強の王道である。

3 件のコメント:

  1.  およそ絶滅した生物は乱獲だけではなかなかそうはならず、環境の悪化が主因であることがほとんどです。水質だけでなくダムや三面貼りが果たした自然破壊はひどいものです。カワウソさんごめんなさい。

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  2.  我町は、日本カワウソが最後に確認された町として、それを売りにしています。しんじょうがわで確認されたため、ユルキャラで有名な「しんじょうくん」も日本カワウソがモデルになっています。市も全力で捜しましたが、発見できませんでした。名前も「オッター(いた)クン」に決定していましたが、絶滅種に認定されました。自然破壊は絶滅種も作りますが、イノシシやシカなどの異常増殖も作ります。これからは、自然との共存も大切なテーマであると思います。

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  3.  土佐の話ももちろん語りました。ところで環境省は絶滅種と認定しましたが愛媛県は「まだ生きているはず」と言って絶滅危惧種のままで今も探しているそうです。高知県はオッター君ですか、オルゾー君にしてほしいですね。
     魚祭(うおまつる)獺(おそ)の顔見よ草の雨 (篤老)
     獺の月になく音や崩れ簗(やな) (蕪村)
     獺に灯をぬすまれて明易き (久保田万太郎)
     獺に飯とられたる網代かな (太祇)

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