2015年6月4日木曜日

丸裸にされる

  この秋からマイナンバー制度がスタートする矢先に、年金機構から125万人の個人情報が流出した。
 マイナンバー制度はゆくゆくは「成長」して、個人の戸籍、資産、病歴等々が積み上げられていくことだろう。積み上げれば積み上げるほど政府や自治体にとって効率的で便利だからである。
 橋下・維新の言うように「無駄を省け」が公務にとっても絶対的な善とするなら当然の帰結となる。
 私はこんなブログを書いているぐらいだから公務のOA化に反対ではないし、「新しい技術の習得が面倒だからコンピュータが嫌い」というような主張には与しない。
 しかし、無駄と言われようが統合してはならないデータは統合してはならないと考えている。
 そこで、元に戻って年金機構の個人情報流出問題にシステムの面から感想を述べる。

 先ず、システムというものは『人間はミスをするものだ』という大前提に立って構築されなければならない。人がミスをしてもシステムがストップをかけるようにである。この考え方はそんなに突飛なものではなく、例えば労働災害防止の考え方としては、手を入れたら動かないプレス機でなければ使用してはならないという常識に類するものである。
 それを、「添付ファイルを開けた一部職員のミスで発生したもので今後は絶対に開けないよう徹底します」で済ませてはならないと思う。
 皮肉を言えば、年金機構の中心的な管理者たちはシステムを熟知しておらず人事管理で出世した者たちがほとんどではないかと推察する。

 次に、私はNTTとは何の利害関係もないが、正直に言ってNTTが受注を独占していた昔の方が行政のシステムが安定していたと思っている。
 だから、ここの話は難しいところだが・・・・、非常に高度なシステムの構築に関する専門家がいない行政体制のまま、何もかも競争入札ということで、表向きは透明性が高まり経費が節減されたと言われながら、実は能力の堕ちたつぎはぎだらけの会社やグループがシステムの構築を受注し、目を覆うばかりのシステムの劣化が起こっているように思えてならない。
 それが、大所高所から見ると業務の能率を著しく低下させており、国民の権利を危うくしていないかと心配している。
 緊急災害速報のシステムが全国的に機能しなかったことも思い出してほしい。
 私としては公会計の専門家が本気になって検討してほしいと願っている。

 最後にこれは想像だが、年金機構は職員の6割以上が非正規職員である。
 だとすると、マニュアルでは重要な情報には正規職員しかアクセスできないようになっていたと想像する。
 しかし、4割以下の正規職員では仕事にならないから、非正規職員がアクセスするのを事実上容認していなかっただろうか。
 ということは想像の範囲を超えないが、管理者の責任逃れのための画餅のようなマニュアルだったのではないだろうか。
 仕事にならない人員体制でカッコをつけようとすると、こういう事故が発生する。
 (※国会で理事長は「人が入れ替わる非正規雇用者にも大量の個人情報が入っている共有サーバーを扱える権限を与えている」と答えたが、個人情報保護の重要性をどのように認識していたのだろう
 多くの人々と本音で議論したいものである。
 マイナンバー制度が同じような風土の上に構築されるなら、個人情報の流出で個人が衆人の眼前で丸裸にされる事故は必ず発生するだろう。

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