2015年1月11日日曜日

天皇のご感想

 昨年12月10日にこのブログで「天皇制と憲法」という記事を書き、「天皇夫婦と宮内庁が一番嫌がっているのは安倍首相だろう」と感想を述べたのだが、この正月にはほんとうにそのことを再確認した。
  以下に『戦後70年』に関わる安倍首相の年頭所感と天皇のご感想の該当部分を、首相官邸ホームページ、宮内庁ホームページから、そのまま掲載する。

 『首相の年頭所感』(官邸HP)
 「今年は、戦後70年の節目であります。日本は、先の大戦の深い反省のもとに、戦後、自由で民主的な国家として、ひたすら平和国家としての道を歩み、世界の平和と繁栄に貢献してまいりました。その来し方を振り返りながら、次なる80年、90年、さらには100年に向けて、日本が、どういう国を目指し、世界にどのような貢献をしていくのか。私たちが目指す国の姿を、この機会に、世界に向けて発信し、新たな国づくりへの力強いスタートを切る。そんな1年にしたいと考えています。」

 『天皇のご感想』(宮内庁HP)
 「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています。」
 
 解説は無用だと思う。常識ある市民なら、先の私の理解に納得していただけるだろう。
 私は、天皇の言葉を利用して安倍首相を批判しようというようなケチな気はないが、事実を確認しておきたいだけである。

 共産党の宮本岳志衆議院議員が、『国会でおりますと、「共産党も本当に今の憲法のままでいいの?天皇条項も変えなくっていいの?」と聞いてくる改憲派議員はごろごろおります。眉ひとつ動かさず、一切の躊躇なく「まったく変える必要はありません」と答えるのが憲法に関する共産党の立場だ』と言っていたが、私はそれでよいと思っている。
 私たちの世代は、住井すえ著「橋のない川」で展開された『人でない天皇がいるから人でない被差別部落民が存在する』的なテーゼが頭の隅に残っているが、これを教条的に振り回してはならないと思う。だから、昭和天皇の戦争責任や改憲派の蠢動に機械的に反応して、現代社会の主要な対決点でもない天皇問題を現下の課題のように語ったり、あるいは、首相らの憲法逸脱の発言を否定したいがために現天皇に政治的な発言を求めるのも憲法の定める象徴天皇制と背反する考えだと思う。
 こういう話を冷静に話していけば、民主党などの野党を超えて、理性的な保守層と共産党の一点共闘の方が先に進むような気がしている。
 堺の市長選挙やオール沖縄の勝利はそういうことを考えさせたように思う。

9 件のコメント:

  1. 見事な対比で一目瞭然。あの戦争から何を学ぶのか、「人間としての資質が問われているのですよ」、という返歌だと思います。

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  2.  去年のことですが、安倍首相ブレーンとして有名な八木秀次麗澤大学教授(日本教育再生会議理事長、新しい教科書をつくる会第3代会長(内紛により解任))が「天皇は憲法改正を進める安倍首相のじゃまをするな」的な天皇批判をしましたが、安倍首相らの本音があらわと言ったところでしょう。
     しかし、天皇に頼って護憲運動というのも情けない話ですし、私は私の記事の後半に力を入れて書いたつもりです。

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  3.  新しい歴史教科書をつくる会です。

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  4.  長谷やん、切り口の難しい、デリケートなテーマを、理屈ではなく資料の対比という説得力ある手法で、見事な記事に仕上げられていることに感心しました。
     年明けから続く、安倍内閣の傍若無人ぶりには、腹に据えかねるものがあります。この腹立たしさを、長谷やんのように冷静で説得力ある記事にしたいと思っています。

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  5.  ひげ親父さんも和道おっさんも、深読みをして買被らないようにお願いします。
     感じたことを素直に書くというと格好がよろしいが、我ながらミーハー的な感想になっていないかと心配です。
     そして、革新的な考えの人々の中に、多くのものごとについて何か紋切型というか、面白味のない意見で良しとする風潮がないかという問題意識があり、あんまり突っ込んで語ることもない「憲法と天皇」の問題を書いてみたいと思ったことが執筆の動機です。

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  6. 早速、宮内庁のホームページの天皇の新年に当たりの感想を読みました。至極、当然のものと思いました。ところが、この時期、「ある意味」勇気ある感想になっていることは極めて残念です。本来、安倍首相が、かつての戦争についての真の反省と総括を率先してしなければならないのですが、かつての戦争を肯定する真逆の動きになっている現状は、極めて深刻で悲しむべきことです。しかも。NHKをはじめとするマスコミはこの感想をもっと、大々的に報じ、解説すべきすべきなのですが、安倍首相を恐れて、ほとんど報じられていません。ささやかでありますが、掲示板に早速、掲示することにします。

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  7.  NHKニュースでは「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び」を意図的に飛ばし、「この機会に、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」と報じました。
     そういう情報操作が大掛かりに進められている昨今、dyougoziさんが掲示板に掲示されることの意味は大きいと思うとともに、おっさんの勇気と行動力に敬服いたします。
     嬉しいコメントをほんとうにありがとうございました。

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  8. 東京新聞のウエブサイトの「論説室から」コラムで「年末年始のびっくり」と題して「紅白」のサザンオーリスターの歌「ピースとハイライト」を「刺激的」として、年始の「天皇の言葉」を新鮮さを覚えたと論じています。(1月14日)ひょっとして「長谷やん」のブログは各方面から注目されているのではないかと勘ぐっています。「朝日や毎日」もこれ位書いて欲しいですね。TVは無理か・・・

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  9.  そのサザンにネトウヨが大掛かりに抗議していますが、フランスの表現の自由を高らかに支持するニッポンマスコミが、このネトウヨの行動を批判しないのも本当は怖ろしい状況だと思います。
     なお、ヨーロッパあげての嫌イスラムのような風潮や「表現の自由」については違和感をぬぐうことができませんが、そのことはいずれまた!

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