2014年6月18日水曜日

春を背負って

  映画「春を背負って」を初日の初回に観てきた。
 木村大作監督の2作目の作品である。1作目の「剣岳:点の記」も観ている。
 最初からドラマ性は期待せず、名カメラマン木村大作の美しい映像を楽しみに行ったので、その限りでは十分満足した。
 演出の隅々には不満もあるが、美しい映像で帳消しにしたい。

 私が日本アルプスを歩いていたのは30年近く前のことである。
 映画の中の山小屋にパソコンがあったり、ちょっとした緊急連絡に携帯電話が飛び交っているのを隔世の感をもって眺めた。

  でも、3000mの本物の景色はいい。
 体温を取られて急速に体力が落ちていった記憶も蘇った。
 重いザックごと体が浮かんで吹き飛ばされそうな稜線の思い出も。
 紙一重で死んでしまう乾いた落石の音も、すぐ後ろから運び込まれた怪我人も、・・・・・3000mは嘘が通用しない本物の世界だ。
 
 3000mの世界では、・・・年金は最後の一円まで必ず支払いますと断言し、フクシマの汚染水は完全にコントロールされていると見栄を切り、戦争にならないために憲法解釈を変えると約束してくれるようなリーダーの言葉を信じていたら間違いなく全員が遭難する。
 地上では、非正規雇用が当たり前になり、日本を代表する自動車会社がこの5年間に法人税を一銭も納めず、株主には1兆542億円配当し、内部留保は4079億円増やしている。
 漫才師のツッコミではないが、それはおかしいやろ。
 国民すべてが3000mの頂で頭を冷やすべきときだろうが、それが無理なら、せめてこの映画を観たらよい。

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